Fahrenheit -華氏- Ⅲ
『ふふっ』今度は心音が小さく笑った。最後の方は少し欠伸が混ざっていた。
『それにしても昨日はユージにやられたわね。まぁ半分は彼のシステムのおかげで途中までうまくいってたけど?流石だわ』
心音の言葉にあたしはちらりと綾子さんを見た。綾子さんは優雅にコーヒーを啜っている途中だった。
「そのことは……」言いかけた言葉をまたも心音が被せた。
『ところで、あんたは大丈夫なの?その調子なら悪くはなさそうだけど』と心音の声がちょっと低まり、心音があたしの体調を心配してくれてるのがすぐ分かった。
「ええ、今は―――
友達といるの」
ちらり、綾子さんの方を見ると綾子さんは目をぱちぱちさせながら自分を指さし。
あたしは綾子さんに小さく頷き
『友達ってユカリ?』と心音が聞いてきて
「違うわ。職場のひとよ」
麻野さんの恋人だって言ったら驚くかしら。
『ふーん、ちょっと妬けるわ』心音が電話の向こう側で唇を尖らせているのがちょっと分かった。
「今度紹介するわ、すてきな人よ」
綾子さんの方を伺うと綾子さんはまたも目をぱちぱち。今度は綾子さんが両手で顔を隠し恥ずかしがっているように見える。
『OK.楽しみにしてるわ。じゃね~♪』
ちゅっとリップ音がして通話は切れた。
本当に―――嵐のような子だ。
くすっ
あたしは思わず喉の奥で苦笑いが漏れた。