Fahrenheit -華氏- Ⅲ
綾子さんがまだここに居られるって思うともう一杯やり直したい気分だったけれど、この後専務との約束があるって言ってたから、あたしは紅茶を出した。
紅茶を淹れていると
ピコン!
あたしのスマホに通知が来た。
「柏木さん、携帯鳴ったわよ」
と綾子さんがあたしのスマホを手にふりふり。
通知を開いてみるとジェニーからのLINEだった。
内容を開いてみて、
「あら、ふふっ」
思わずあたしが笑みを浮かべると
「どうしたの?」と綾子さんが目だけを上げた。
「友達からLINEです」
「友達?」
「ええ、数か月前ニューヨーク支社から外資物流に研修で来た子です。(※Fahrenheit参照)その子に新しい恋人ができたみたいでノロケLINEです」
「柏木さんLINEしてるの?」
「はい。佐々木さんに教えてもらって。けれどお友達は佐々木さんとジェニーしかいませんけど」
恥ずかしそうに笑うと
「私もやってるわよ。友達になりましょうよ」と綾子さんが提案。
「ホントですか?では是非」
と言うことでQRコードでお互い読みこんでいる間、綾子さんはちらちらとあたしのスマホを気にしていた。
「何か?」と訪ねると
「いえっ!可愛いスマホだなと思って」と綾子さんが慌てた。
「そうですか?店員さんに勧められて適当に選んだんだんですが」
「そうそ、最近変な詐欺が流行ってるから不審なメールとか電話には純分気を付けてね」綾子さんは至極真剣な顔で言った。
あたしが怪し気な詐欺に引っかかるたまではない。
「ご忠告ありがとうございます」あたしは苦笑い。
それから三十分程綾子さんと紅茶を飲みながら、中途半端だった話を再開させた。
けれど綾子さんはどこか心ここにあらずと言った感じに見えて、そわそわとあたしのスマホやインターホンの方を気にしている。
何なのだろう。
まるで、あたしに誰か訪ねてくる―――そんな予知をしているように見えた。