Fahrenheit -華氏- Ⅲ
はぁ…
啓は大きなため息をつき、ソファに逆戻り。
額を覆いながら
「つまりあれは君なりの”罠”だった、と言うわけか。二村を陥れるための」
「あんなに分かりやすくスマホを仕掛けられたら、分かりますよ」
「つまり俺がデータを持ち去ったのは無駄な行動……いや、むしろ君の”計画”を邪魔した、と言うこと…?」
額を覆ったまま啓が低く呟く。
「ええ、そうですね。余計な事です」
でも――――……
「ごめんなさい、お手洗いに」
あたしは席を立ち上がった。啓は顔を上げずただ顔を覆って首をうなだれている。
パタン…
リビングの扉を閉じて、あたしはその場でずるずるとしゃがみこんだ。
思わず両手で顔を覆う。
確かに二村さんの仕掛けた罠には気づいていた。それを逆手にとって利用しようと思って気づかないフリをしたのは事実。
まさかそのデータを啓が持って行ったなんて……
計画が台無し…
ううん……
あたし、ホントは
嬉しかったんだ―――
だってあたしがもし逆の立場でも、啓のことを思ってそうするだろうから。