Fahrenheit -華氏- Ⅲ

ここまで来たらもう親父にすべてを暴露しあいつに託すしかないのか、と考えたり、いや、まだ出来ると考えなおしたり、と俺の中は日々せめぎ合いだ。


けれど俺は―――まだ出来る、と思っている。


何故なら、瑠華も同じように裏で動いているからだ。


俺は瑠華を



信じている。



―――

――――



12月に入った、と言うところだ。隣の物流管理本部はバタバタとしていた。


内容こそ聞こえないが村木の怒鳴り声がここまで飛んでくる。


「わぁ……隣は荒れてますねぇ…」と佐々木が顔をひくつかせてボソッ。


「あちらは取り扱い案件もこちらとは桁違いなので自然でしょう。それよりも部長」瑠華が書類をめくりながら


「我々の取引先のアメリカやヨーロッパの企業は12月20日から年始に掛け、クリスマス休暇がありますので、少し取引を前倒しするのがよろしいかと」と淡々と言った。


「「クリスマス休暇?」」


聞きなれない単語に俺と佐々木が同時に反応した。


瑠華は書類をまとめながら、「英米では割と普通です。クリスマスとお正月を家族と過ごす為、多くの企業や人々が有給を使って休暇を取るんです」


「へぇー!」佐々木は目をぱちぱち。


俺も知らなかった。こっちで言うゴールデンウイークやお盆休みみたいなもんか??


「そっかー、じゃぁ早めに調整しないとな。助かったよ柏木さん」


瑠華も―――NYに居た時はそうやって長い休暇を取ったのだろうか。家族と過ごす為に―――


マックスと、愛する娘の為に―――


考えると胸の奥がもやもやとくすぶり、細いのろしのようなものをあげる。


くだらないことだ、終わったことだ。


今、考えたって仕方ない。


今は俺の隣で働いてくれている。


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