Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「でもなー、頭では分かってンだけど心が追い付かないって言うか…」


昼休憩に入り、どっか近くの店で軽く済ませようとエレベーターを待っていると思わず独り言が出ちまった。


「何が追い付かないって言うんですか」


と、ふいに声を掛けられ顔を上げると、陰険村木が怪訝そうな顔を作っていた。


「ぅわ!」


思わず素で驚いちまった。


「何ですか、人を幽霊みたいな扱いして」


「……いや、すみません…まさか人が居たなんて…気づかなかくて…」


「注意散漫じゃないですか?12月に入って忙しくなるのはご存知でしょう?それとも外資物流は余裕ってところですか?」


たっぷり嫌味を言ってくるあたり村木の通常運転だ。


俺は頬をひくひくさせながら


「うちには優秀な部下が二人も居るので」とわざとらしく鼻で笑ってやると


ふぅ、と村木はため息をはいた。


次はどんな手で来るのか構えていたが


「あなたの所が羨ましい限りですよ」と村木は額に手をやり、いつになく素直!!


怖いんですけど!


何なの。


あー早く、エレベーター来てくれねぇかな。


と思っていると


「ところで今から昼休憩ですか」と村木に聞かれ


「ああ、はぁ」と素直に答えちまった。


「ではご一緒しませんか?」


はぁ!?


な・ん・で!!この俺様が陰険村木とランチしなきゃいけない!


『遠慮しておきます』と言いたかったが、それよりも早く村木が


「ここからちょっと離れてはいるんですが、うまい定食屋を知ってるんですよ」と行く気満々。


断れねー!!


これって一種のパワハラじゃ??

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