Fahrenheit -華氏- Ⅲ
寒く、凍える日々だけじゃない―――
本来、冬は美しいものなのだ。
「考え方を変えると物の見方が変わってくるわ。
だからね、瑠華ちゃんと離れている今だからこそ冷静になって見える部分がある。
見誤らないで、啓人。
あなたは精一杯瑠華ちゃんを信じて、この寒い冬の恋を乗り切るのよ。
きっと佐保姫(春の女神)が迎えにくるわ」
紫利さんがテーブルに置いた俺の手を力強く握ってきて、俺は大きく頷いた。
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「ごちそうさま」
俺の用事でわざわざ嘘までついて出てきてくれたのに、紫利さんは『誕生日だから』と言う理由で食事代を全額払ってくれた。
「いいのよ、今度は奢ってちょうだい。
その時はそうね、佐保姫が迎えに来たときでいいわ」
紫利さんはうっすらとほほ笑み、俺も笑い返した。
「良い報告、ここでまたしたい」
「頑張って」
そうして俺たちはホテルの前で別れた。
その日は普段飲み慣れていないシャンパンを飲んだからだろうか、ほろ酔い加減でベッドに入った。
紫利さんと会ったことで、心の芯がちょっとだけ温かい。
「ガキじゃないんだし、女に慰められたぐらいであったかいとか……」
クッションに顔を埋めて独り言。
でも、会えて良かったな。
これが本音。
相手が瑠華だったら――――この何倍嬉しいんだろう。
そんなことを想像しながら、いつしか俺は眠りに落ちていた。