Fahrenheit -華氏- Ⅲ
瑠華はいつも通り仕事を始める。
やっぱ俺の誕生日って忘れてる―――のか……?
じゃぁこのプレゼントは瑠華からじゃないのか……?
悶々と考えていると
「おはようございまーす」
佐々木が出社してきた。
「おう(おはよう)」と短く挨拶すると
「部長、今日お誕生日でしたよね、おめでとうございます」と佐々木がにこにこして言ってきた。
ぅをお!佐々木!ナイスタイミング!
この流れで確認できるかも!
「そ、そーだけどよく覚えてたな」俺の声はひっくり返った。
ちらり、と瑠華の方を見ると瑠華がゆっくりと顔を上げ
「そうだったんですね、おめでとうございます」と小さく頭を下げた。
え。
それだけ―――
ってことはやっぱこのプレゼントは瑠華じゃない?
「僕色々考えたんですけど、部長が何を欲しいのか分からなくって。んで、今日仕事終わった後、部長の誕生日会しませんか?
ね、柏木さん」
最後の方の問いかけは瑠華に向けたもので、その笑顔が若干赤くなっていた。
佐々木め、俺の誕生日を利用して瑠華と飲みに行く口実が欲しかったんだろうが!
ふふん、生憎だが俺様の誕生日ぐらいで瑠華が『いいですね、そうしましょう』なんて言うか、バーカ。
って……考えてる僕ちん悲しくなってくるよ、クスン…
と心の中でぼやいていると
「そうですね、おめでたいことなので」
書類をトントンまとめながら瑠華が淡々と言い
「え!?」
祝ってくれるの!?
俺の方があたふた。
「先約があるのなら、無理強いはいたしませんが」との言葉に
「せ、先約なんてないよ!俺”フリー”だし」とわざと『フリー』のワードを強調して言った。
瑠華は俺がフリーでもそうじゃなくてもあまり興味がなさそうで
「そうですか、ではお店を選んでおきます」とまたも淡々と言う。
「あ、でも忘年会シーズン入っちゃってるし予約取るの難しいかな……」と佐々木が小さく唸る。
「なら“ほしの屋”でいーんじゃね?桐島に席押さえてもらうように言っておく」
※ほしの屋……会社の経営する直営店の居酒屋
トン……
瑠華が書類を整える手を止め、その音がやけに大きく聞こえた。
「部長のお誕生日なのに、ご本人に手配をお願いするわけには行きません。私が探します」
へ―――?
「じゃ、じゃぁ僕も一緒に探します!」と佐々木が勢いよく立ち上がった。