Fahrenheit -華氏- Ⅲ
分からん……
分からん!
分からーーーん!!!
何が、って?
やっぱあのプレゼントは瑠華からじゃないのか??
ほしの屋を桐島に頼もうとしたら瑠華自ら手配するって言うし。まぁ理由が俺の誕生日だからって言うことだけど。
何か……
ちょっと嬉しいかも。
だって誰の誕生日だろうが無関心そうな瑠華なのにっ!
俺の為に店を探してくれる、とか!
いや待て啓人、浮かれてる場合じゃない。
別れてからちゃんと食事するの(佐々木は邪魔だが)初めてだ。
変な緊張してきた。
と言うわけで、目下俺の避難場所になっている
「ゆ~じぃ~~!」
結局、ここに来ちまうわけだ。
まるで帰省本能だな、これは。
「今度は何やらかしたんだよ?」裕二は心底迷惑そうな顔をして椅子に座ったまま俺を見上げてきた。
この部署はちょうど昼休憩なのか裕二以外のエンジニアがほとんど席を空けていた。
俺はちょっと目をまばたき
これってチャンスじゃね?
―――
―――――
「社員の出退勤記録の閲覧ぅ。もう勘弁してよ!俺どれだけ違反してると思ってんだよ!」
僅かに残っているエンジニアに聞こえない程度で裕二が怒る。
「分かってるって!でもどうしても気になることがあって!頼むよ!今度奢るから」
俺は顔の前で手を合わせて拝む仕草。
裕二はきょろきょろと辺りを見渡し、近くに社員が居ないことを確認すると小さく吐息。
「わぁったよ、乗りかかった船だから、やりますヨ」
「サンキュ♪今度奢る~」と言うと裕二は苦笑い。
「てかお前今日誕生日じゃね?おめっとさん。今日は誕生日割引でただで引き受けてやる」
「ヤッタ!裕二、心の友~」
俺は裕二に抱き着くフリ。
「やめろ!マジで気持ち悪りぃんだよ」と裕二は真剣な顔つきで俺を払った。
けれど次の瞬間真面目な顔でパソコンのキーボードの向き合った。
「すぐ出んの?」
「それぐらいならな、で?誰のを調べればいいわけ?IDは?」
「さっすが裕二♪
IDは0866XXXXXXX
柏木 瑠華」
俺の言葉に裕二はキーボードに這わせていた手をぴたりと止め
「お前……これ以上俺を厄介ごとに巻き込むな」と眉をしかめた。
「厄介ごとじゃねぇって。あくまでプライベートなことが知りたいだけだ」
「あのなぁ、それってストーカー入ってンぞ」
「うるせ、前お前のストーカー事件解決してやったろ、俺は知りたいだけなんだよ、出退勤情報が」
裕二は大仰にため息をつき
「はいはい」と頷き、またもキーボードに手を這わした。