Fahrenheit -華氏- Ⅲ

裕二が出退勤記録を調べてくれるまでそう時間はかからなかった。


五分も掛からないうちに


「ほれよ」と瑠華の昨日から今日にかけての出退勤時間の記録を出してご丁寧にもプリントアウトしてくれた。


俺は昨日12月1日瑠華が退社していった22時30分~瑠華が今日出勤した2日07時45分までの記録を指でなぞった。


そして目を開いた。


1日22時30分に退社した筈の瑠華が2日の1時半に出勤して、約10分で再び退社している。





やっぱり―――瑠華だったんだな。



「今度は何やらかしたんだ、柏木さん」


裕二は迷惑そうに目を細めていたが、俺は口元を手で覆い思わずその場にしゃがみこんだ。


瑠華―――……


泣き出しそうになるのを何とかこらえ、首からぶらさがるアトラスリングをぎゅっと握る。


「ちょっ…!お前っ…何泣いてんの!」


泣いてる―――……?


そっか、俺泣いてるんだ……


嬉し泣きだ。


――――


――


「はぁ~、泣かせるね、柏木さん」


結局、裕二のフロアの喫煙ルームに移動した俺たち。


幸い裕二と俺しかいなかったからこんな話できるわけだけど。


「お前も、柏木さんのプレゼントだけで泣くなんて、二人とも両想いってことだろ?


だったら二村にバレない程度に寄り戻せばいいじゃん」


ふぅー、と裕二は煙を吐き出しながら吐息。


「んな簡単なもんじゃないんだよ。二村は”あの稟議書”を握ってるわけだし、バレたら瑠華も俺もただじゃすまない」


「けどさー、柏木さんがお前に返してきた例の稟議書って”ノープロブレム”なんじゃん?だったら言葉通り問題ないんじゃない?」


「確かにあの稟議には”問題”は見当たらない。けれど二村がどう出るかまだ分からないし、オークションを隠し撮りさせてまで瑠華はあのオークションの”信憑性”を見せつけたかった。


つまりあのオークションは瑠華にとって切り札なんだ。それを無下にはできない」


「そうかもしれないけどさー、もどかしいんだよお前ら。


そんなに好き合ってるのに、一緒にいられないとかさ。


不倫カップルとか、遠距離カップルみたいだな」


裕二は悲しそうに苦笑した。




俺たちは心も体も近距離なのに、


遠距離だ―――


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