Fahrenheit -華氏- Ⅲ
佐々木さんはびっくりしたように目を丸め、
今度は佐々木さんに『追い払ってください』と目合図。
今度は通じたのか
「あ、あははー、まだ決まってませんけど」と何とか言い訳。
「じゃぁ俺らも混ぜてくださ~い♪店選び手伝います。部長のお誕生日だったら豪華にしないと」
やっぱり……
この人には”遠慮”の二文字がないのだろうか。
「あ、でも内輪で軽く済ませるつもりだし……部長も…二村くんが居たらびっくりするんじゃないかな…」と佐々木さんが慌てる。
「そこはほら、サプラーイズ!的な??葉月だって参加したいだろ?こないだまで外資に居たわけだし」と二村さんが緑川さんに振り返り
「え?」話題を振られた緑川さんはびくりと肩を揺らした。
緑川さんは咄嗟に断る口実が思い浮かばなかったのだろう、目をきょろきょろさせ口ごもる。
たまりかねて
「二村さん……」
あたしが口火を切ると
「葉月、今日お酒の気分じゃないから……」と緑川さんは制服のスカートをきゅっと握りながら低く言い
「そっか……じゃぁ遠慮しておこうか」と二村さんはそれ以上強く出てこなかった。
あたしは佐々木さんにスマホを返しながら
「遠慮するも何も、最初から誘っていませんから。お祝いされる部長だって心からお祝いしてくれる人と一緒に居たいでしょう」
そっけなく言うと
「ご……ごめんなさい、葉月そんなつもりじゃ…」と何故か巻き込まれただけの緑川さんが蚊の鳴くように謝る。
「あなたは悪くな……」
言いかけた言葉を
「柏木さん」
二村さんの思いのほか低い言葉があたしの言葉をかき消した。