Fahrenheit -華氏- Ⅲ
心音と電話をしていると昼休憩が終わりそうになった。
「ごめん、もうそろそろ戻らなきゃ」と言うと
『あー、ごめん。最後に一つ。あんたが探してたMiss瑞野?のSNSどこにも見当たらないわ。今のところね』
そっか……
まぁ半分諦めていたところはある。それ程の落胆はない。
「Thanks.(ありがと)また電話する。戻るわ」
『OK♪じゃぁまたね。Bye.』
「Bye」短く挨拶をして通話を切ると、いよいよ昼休みが終わるころだった。
慌てて踵を返し、ブースに戻るとパーテンションの向こう側がやたらと賑やかだった。
「「「部長、お誕生日おめでとうございま~す♪」」」
明るい女性社員の声も聞こえてくる。
「ただいま戻りました」と挨拶をしながら戻ると佐々木さんが苦笑いで「お帰りなさい」と出迎えてくれた。
啓は他部署の女性社員三人に囲まれていて、ちらりとこちらを見たものの苦笑いだけをよこしてきた。
「これ、お誕生日プレゼントです♪」と女の子たちは可愛らしい、或いはブランド物の紙袋をズイと啓に突き出す。
「あ、あはは~ありがと~気持ちだけ受け取っておくよ~」と啓は両手で制している。
「凄いですね、毎年ああなんですか」とあたしが啓に知られないようこそっと佐々木さんに聞くと
「毎年みたいですねー、少なくとも僕のいるときはそうでした。
でも部長、絶対受け取らないんですよ」と佐々木さんもこそっと返してくる。
え―――
てことはあたしの誕生日プレゼントも?