Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「プレゼントは嬉しいけどさ~、ほら俺って割と律儀な方だから??君たちのお誕生日にお返ししないと~
でも結構な人数で覚えられてないし、俺の方が破産しちまう」と啓はへらっと笑って女の子たちのプレゼント攻撃をかわす。
断り方が板についている。
慣れてるわね。
「毎年ああ言う断り方してるから、女の人たちは部長のデスクにこそっと置いていくひとも多いんですが、部長はそのままスルーで置いたまま帰っちゃうんですよ。その後一切開封しないし、そのまま贈り主が様子を見に来る日まで放置。
冷たい対応かもしれませんが、毎年女性は懲りないって言うか…」
佐々木さんがまたもこそっと説明をくれた。
へぇ…
じゃぁあたしのプレゼントもスルーされたかも。
と思っていると、啓のスーツジャケットの袖からちらりと見覚えのあるティファニーのコードブレスレットが見えた。
あれは―――
あたしがプレゼントしたブレスレット……
つけてくれたんだ…
―――嬉しい
って言うか啓、スーツにそのブレスレットはちょっと……社会人的マナーでもどうなの??
と思っていると、
「あ、部長!素敵なブレスレット!」と一人の女の子が目ざとくそれを見つけた。
「あ、これ?」啓は慌ててブレスレットを隠したようだが
「えー!!誰からのプレゼントですかぁ!?」と女性社員たちが急に騒ぎ出した。
て言うか煩い。
仕事の邪魔だ。
ちょっとイライラしはじめていると
「これ?ああ、裕二からもらったものだから。あいつとは誕プレ贈り合いしてる仲なの」
との啓の言葉に
キーボードを叩いていたあたしの手がふと止まった。