Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「じゃぁ、仲直りってことでいい?」


と、麻野さんがまるで置いていかれそうになった小さな子供のような目で訴えてくる。


「仲直りも何も、元々喧嘩してませんけれど、私たち」


それ程仲が良いわけでもないけれど。


「ホント!?良かったぁ」と麻野さんもほっと胸を撫でおろす。


「あ、そだ。仲直りついでに教えてあげるよ」


だから喧嘩してないってば、あたしたち。





「啓人、柏木さんからブレスレットもらったこと、俺に自慢しに来たぜ」





え――――……


「あのプレゼント、私からってことに気づいていたんですか」


今度はあたしの方が勢い込むと


「ま、まぁ?」と今度は麻野さんが引き越し。


「確信がなかったみたいだから、ちーーーーっと裏技使ったんだけど…」と麻野さんはもごもごと口の中で呟く。


裏技?


麻野さんは「啓人には内緒にしてね」と言い置き、啓が麻野さんにあたしの出退勤記録を調べさせたことを教えてくれた。それで確証を得たようだ。


「……なるほど…」


「…ごめん、心音ちゃんや柏木さんのこと責めるような言い方しておいて、結局俺も裏でこそこそしちまったけど」


「いいえ…」


あたしはカップの持ち手をきゅっと握った。


どんな手を使っても、あのプレゼントがあたしからのものだと知って、そして受け取ってくれた―――


それを知れただけで充分。

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