Fahrenheit -華氏- Ⅲ

イイ女の定義。



♠ K ♠


瑠華が裕二と消えてから三十分経った。


俺を取り巻いていた他部署の女子社員たちを何とか追い払い、俺は喫煙ルームに行くと慌てて裕二に電話。


裕二め!瑠華とどこに行って何を言う気なんだ!


まさかプレゼントに浮かれてる模様を瑠華にチクってるんじゃないだろうな。


いや、それだけならまだいい。散々、瑠華に怒られてきた裕二だから、瑠華の弱みを握ったとでも思ってここぞとばかり苛めてるんじゃないだろうな!


TRRRR…


しかしコール音は虚しく鳴り続けるだけ。


くっそ!裕二め!シカトたぁいい度胸だな!(←シカトと断定)


一本目のタバコを灰にし終わったところで二本目に手を伸ばそうとしていると


チーン…


エレベーターが8Fに到着したのを報せ、中から瑠華が降りてきた。


透明ガラスの中に居る俺にも気づかず、瑠華は何事もなかったかのようなあっさりとした顔つきで颯爽とフロアに向かっていく。俺は慌てて扉を開けると


「瑠……柏木さん!」


と彼女の背中に呼び掛けた。


瑠華はゆっくりと振り返り、何事も無かったかのように「あ、そこにいらしてたんですか、お疲れ様です」ときっちりと頭を下げた。


「あ、うん。あの……裕二に…」


何かされてない?とはなかなか聞きにくい。友人のこと疑ってるわけじゃないけど。


「麻野さんに?」と瑠華が目をぱちぱちさせて聞いてくる。その後に続く言葉を聞きたいようだ。


「…な、何話してたの…」


探るように聞くと


「深い話は特に。綾子さんの件でちょっと。彼女となかなか会えず寂しいと仰ってました。そう言えば私も彼女と久しくお喋りしてなかったので、何とも答えられませんでしたが」


綾子の、こと?


なぁんだ……


「話はそれだけですか?私は仕事が残っているので」と瑠華は腕時計を見る。


「あ、うん……ゴメンネ、引き留めちゃって」


「いいえ、部長も油売ってないで早く戻ってくださいね」


「あ、ハイ」


結局、こーなんだよ、いっつも。


俺ってば瑠華に叱られてばかり…クスン。


でも裕二と何もなくて良かったー

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