Fahrenheit -華氏- Ⅲ
二人の社員は俺たちが居ることを知った所で噂話を断ち切ったようで、業務の話に切り替えた。見た目年齢や話の内容からたぶん二村と同期か、佐々木と同じぐらいかもしれない。
俺は他の社員があの二人(二村&緑川)の噂をどうしているのか気になった。
「緑川さんて数か月前はうちの部署にいたんだよね、あの二人付き合ってるって俺も聞いたけどマジなの?」と俺が興味深そうに社員に聞くと、彼らは少しばかりほっとしたようなそれでいて噂話を再開できたことが嬉しいような複雑な笑顔を浮かべ
「マジみたいっすよー、何か、緑川さん妊娠してるとかしてないとか」
一人が言い出し
「おい、そこまで言っていーの?」ともう一人が窘める。
いや、俺が聞きたかったのはそうゆうことで
普段噂話に耳を貸したり突っ込んだりしない俺だが、
「へー、それはめでたいな、何かお祝いしないとな、ね?柏木さん」俺がわざと瑠華に会話を振ると、瑠華はしゃがんだまま
「ええ、そうですね。おめでたいことです」
と頷いた。
どうやら噂は順調に(?)広まっているようだ。これも瑠華の作戦なのだろう。
男たち二人はこれで完全に安心しきったのか
「二村のヤツ、相当緑川さんに入れ込んでるみたいで、『ほ』の字みたいです」
『ほ』の字とかイマドキも言うんだな、完全に死語だと思ってたが。
「緑川さんは魅力的な女性です。いいお話になるといいですね」と瑠華はいつになく積極的。
普段……と言うか瑠華と会話をしたことのないだろう、男二人がほんの少し顔を赤くして
「ですよね~」と軽い口調で瑠華に相槌を打つ。
「おい、やっぱ緑川さんとは桁違いじゃん、めちゃめちゃ可愛いな、生柏木補佐」と男一人が瑠華に聞こえない程度でもう一人にこそっ。言われたヤツもブンブン顔を縦に振っている。
あったりまえだーのクラッカー!!(←あんたこそ死語)