Fahrenheit -華氏- Ⅲ
えーっと……
俺が瑠華に対する気持ちであってぇ…
なんて言えるわけねぇ。
「べた惚れってことだよ」無難に答えると、瑠華は分かったのか分かってないのか小さく頷き「そうですか」と短く答えて
「それでは私はお先に失礼します。佐々木さんのお手伝いをしてきます」と言って喫煙ルームを立ち去った。
後に残された俺たち三人。
「お、俺……何か柏木補佐にマズいこと言ったのかな」と一人があわあわと口元に手をやる。
「いや、そうには見えなかったけど、でも……あー……」ともう一人がちらりと俺を見て慌てて視線を逸らした。
あー、”そっち”の噂話も続行してんのね。とっくにゴシップネタから消えたかと思ってたケド。
「俺と柏木さんが付き合ってて別れたって話は、噂だから。俺たちは何もないの。柏木さんが知ったら怒るぞ?」と俺は何とか苦笑い。
「そ…そーですかぁ……まぁ噂は噂ですしねー」と一人があせあせと忙しなくタバコを吹かす。
「大体、柏木さんは俺の範囲外。俺、年上の美人系が好きだから。柏木さんは年下だし」←完全なる嘘
まぁ…?事実少し前までは年上の美人(ついでに言うと人妻)と付き合って(?)たけど。
俺の言葉を冗談ととったのか或いは本気ととったのか
「へぇ~意外スね」と一人が興味深そうに身を乗り出す。
「俺の部署にも神流部長より年上で、部長のこと狙ってる女の先輩いますよ。今度紹介…」
「生憎だけど、”彼女”以上のイイ女はいないって気づいた。
フられた後に気づくって間抜けもいいところだがな」
俺はポイっとタバコを灰皿に捨て、
「因みに俺の元カノ
銀座の超一流クラブの売れっ子ホステス。
俺がお子様だから大人の彼女についていけなくて捨てられたの、そのタバコのように、な」
俺は灰皿を指さし、小さくウィンク。
「じゃ、お先」
短く言って喫煙ルームを出るときに背後から
「「かっけーーー!!」」と二人が叫び声のような奇声をあげていた。俺は軽く肩をすくめ
「嘘はついてないぜ?」と小さく笑いながら
この話は噂話になっても支障がねぇだろ、と計算。
紫利さんと関係があったことを知ってるのは佐々木と村木だけだ。あの二人が不用意に俺のスキャンダルを口にするとは思えない。
ま、体のいい逃げ口実だな。
ごめん、紫利さん。
俺はまたも心の中で手を合わせた。
でも、あなたがイイ女だったのは
間違いないよ。