Fahrenheit -華氏- Ⅲ


最初の一杯目はビールで始まった。


三人の元にジョッキのビールが運ばれてきて


「では、部長。お誕生日おめでとうございます。乾杯」と瑠華が全然『おめでたい』と言う感じではない口調でグラスを掲げ、俺たちは乾杯する気だった…





俺たちが精一杯腕を伸ばしてもグラスが重なることなく…


くっ…この無駄に大きい円卓のせいか!?


「すみません、私としたことが……店のチョイスを間違えたようです」と瑠華がガクリと首を項垂れる。


「や!いいよ、いいよ!俺、中華好きだし!」


「あ!僕春巻き食べたいな~!」と佐々木も必死にフォロー。


「私はエビシュウマイと、ビールのお代わりを」と三秒で立ち直った瑠華ちゃんは何事もなかったようにビールを飲み…


てか早っ!!


相変わらずだな~


てか瑠華とターンテーブルを回す時が再来するなんて、約一か月半前の”あの時”は思ってなかった。空港で心音ちゃんを送っていったとき以来だ。


じーん……


一人灌漑にふけっていると


「僕、餃子も食べたいです」


「私はエビチリとエビマヨで悩んでます」


瑠華……どんだけエビ好きよ…


てか物思いにふけっていると出遅れる。


「俺は四川風麻婆豆腐と、青菜炒め」


その外にもいくつか料理を注文して、オーダーした料理でたちまち円卓が埋まった。


俺たちは例のごとく仕事の話から始まった。


「クリスマス休暇ってどんな感じなんですか?ほとんどの企業がお休みに入っちゃうんですか?」佐々木がテーブルを回し、


「企業によって、ではなく個人によって変わってくる所が多いか、と。前に居た会社でも私は有給の取り方は個々に任せていました」


と言いながら小籠包の蒸し籠に箸を伸ばしている。その小籠包が俺の前まで回ってきた。


「向こうは日本人程労働が好きと言うわけではないので、その辺はきっちりしてますよ」


「いや、こっちだって労働が好きで働いてるワケじゃねぇだろ」思わず口からこぼれる。


「私は好きですが」


そっか……そーだったね…


「部長は好きじゃないんですか」と瑠華が猫のような目を上げて聞いてきて




「嫌いだね」




ビールを飲み干しキッパリ。


「あー、うちもクリスマス休暇欲しいよね~


皆、いっそその時期休んじゃう?」俺が提案すると


「賛成!」とノってきたのは佐々木だけで


「ダメ」と瑠華に反対された。


……くすん、瑠華の鬼!

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