Fahrenheit -華氏- Ⅲ
そんなことを話し合っていると、あっという間に一時間が過ぎた。
俺はビールから紹興酒に変えて、瑠華は相変わらずビールを5杯……いや、6杯目だ。
適わない…
佐々木に至ってはビール二杯目で早々にダウン。
テーブルに突っ伏して寝息を立てている。
つか、これって(プチ)チャンスじゃね??
別れてからゆっくり二人っきりってあんまなかったし、これまでどこかギクシャクしてたし、いい感じに酒も入ってきている、普段喋れなかった分、酒の力も借りて話せる……??
と、俺は卑怯なことを考えていた。
「最近どお?」俺は紹興酒(ぬる燗)が入った猪口を持って、瑠華の隣にさりげな~~~く移動。
「『どお?』と聞かれましても、何をさしていらっしゃるのですか?」
瑠華がビールに口を付け目だけを上げる。俺が移動してきたこと、特に嫌がっている節はなさそうだ。とりあえずはほっ。
「色々だよ、仕事とかプライベート……とか?」
プライベートのこと女子社員に聞くのはセクハラだ、と瑠華に怒られるかも、とドキドキしながら聞いたが
「別に何も」と瑠華の返事は否定こそないが短かった。
「そう言えば最近、紫利さんと仲良くしてるみたいだね?」
必死に考えた質問は結構どーでもいいことだった。ホントは瑠華の周りにオトコがうろついてないか探りを入れたかったのに。
「ええ、とても良くしてくださって。”元カノ”同士、話も合いますし」
瑠華が目を伏せ口元に淡い笑みを浮かべ冷笑を浮かべた。
完全な嫌味だが、怒る筋合いもない。
俺は軽く肩をすくめてみせた。
「すみません、意地悪が過ぎましたね」瑠華は眉を寄せて悲しそうにちょっと笑った。
「いや……事実だから…」
そんな顔するなよ、
そんなに悲しそうに……無理やり笑うなよ
でも、そうさせてるのは
俺だ。