Fahrenheit -華氏- Ⅲ
お風呂に入ったばかりで暑すぎたはずの体が一気に冷めた。
冷たいビールを…と思っていたけれど、その気分にもなれずあたしはスコッチの瓶からそのままグラスに注いだ。
首筋をまだ乾ききっていない髪から水滴が落ち、バスローブの襟を冷たく濡らす。
スコッチを飲めば少し落ち着くかもしれない。
グラスに入れたスコッチを一気に煽り、それでもどうにも気になってその経済紙を手に取った。
前はアメリカの経済紙を読んでいたが、最近は日本のものも読む。
その経済紙は日本のもので、しかし表紙に写っていたのは、見知った顔だった。
「Jake Daris」
―――ジェイク・ダリス
NYでは割と名の知れた外資系ファンドの一人者。
年齢はあたしの―――確か四つ上だった筈。マックスとそう変わらない若手にも関わらず、次々と企業買収を成功させ、その道のプロ。
雑誌の見出しには『Contradiction.Co(通称CC)のジェイク・ダリス氏が日本企業の買収に乗り出し』と書かれていた。
久しぶりに見た彼の写真は五年以上会っていないのにちっとも”老けた”と言う印象はなかった。
180㎝以上の長身はスラリとスタイルが良く、一切染めていないプラチナブロンドにアイスブルーの目が魅力的ななかなかのハンサム。
いっときはモデル事務所からもオファーが来ていたようだが、彼はそれを断った。
自分の外見が魅力的だと知っていても、彼の興味はもっぱら『お金』
外見で稼ぐよりも、大きなお金を動かす方が好き、なのは今も昔も変わらない。
外資系ファンドとは聞こえはいいけれど一歩間違えれば悪徳な金貸しだ。
あたしはすぐさまスマホを取り出した。