Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「You are charming both inside and out.That's why I wanted to go out with you.(君は見た目も、中身もチャーミングだ、だから付き合いたいと思ってね)」
と、随分ストレートに告白されたことに戸惑った。
こんなに見た目もよくお金も持ってそうな人が何故、あたしに?
「What?(は?)」
コーヒーの紙カップにきゅっと力が入った。
新手の詐欺とか??
「Do you have a boyfriend or something right now?(今ボーイフレンドとかいるの?)」
とまたもストレートに聞かれ、あたしはちょっと考えたのち、何故か正直に
「My boyfriend may or may not be there.(いるかもしれないし、いないかも)」と答えてしまっていた。
と言うのも、高校時代から付き合っていた当時のクラスメイトと連絡が取れなくなってもう三か月が過ぎていたからだ。
これを自然消滅と言うのだろうか。
それをさりげなく聞かせると
「Got it, For the record, he's already forgotten about you.(なるほどー、ハッキリ言うと彼は君のこともう忘れてるよ)」と言われた。
ホント……ハッキリ言うわね。
でも自然と怒りはこみあげてこなかった。
もしかして、誰かにそう言ってもらいたかったのかもしれない。
もう諦めろ、と。
あたしがしたいのは心焦がれる素敵な恋愛。
高校時代の彼とはそれなりに楽しんでいたが、心焦がれる、とまではいかなかった。
だからか、それ程までにショックを受けなかった。
「That doesn't mean I'm going to switch to you right away...(だからってすぐあなたに乗り換えるのは…)」
と顔を上げると、突然のキス。
びっくりして目を開いたままにいると、彼は悪戯っ子のようにペロリと舌を出し
「Who's a better kisser, that thin-skinned guy or me?(その薄情者の彼と俺、どっちがキスがうまい?)」と聞かれた。
怒りだす…どころか何故かあたしは苦笑い。
詐欺師かもしれない。けれどお金が絡んだら切ればいい、その時のあたしはそう軽い考えだった。
三か月も連絡の取れない恋人のことを考えて寂しかったのかもしれない。
「I lost.Your feelings have won me over.(負けたわ、あなたの気持ちに)」と答えた。
特別、心揺さぶられる何かがあったわけではない。
ただ、このひとの―――まっすぐさにどこか惹かれていたのかもしれない。
その日、あたしはバーに連れて行ってもらった。
アメリカでは21歳以上しか以上しか入れない特別な場所に少しドキドキした。ID提示を求められるかと思ったが、難なく入れたわけは、ジェイクの友人が経営するバーだから、だと言うことをどこで知ったのか、記憶が定かではない。
と言うものの、その日あたしは生まれて初めてのお酒を飲んで、(当時はあまり強くなかった)酔っぱらった挙句、次の日目を覚ましたらジェイクと裸で寝ていた、と言う失態をやらかした。
起きた瞬間思ったこと。
ハメられた。
言葉通り。こほん…
その場を逃げるように立ち去ろうとしたが、ジェイクが起きだしてくるのがそれよりも早かった。