Fahrenheit -華氏- Ⅲ
――――
――
目が覚めた。
セットしたアラームを切ると、ぴったり朝の7時。
NYでは18:30頃。
いい時間帯である。
顔を洗って歯を磨き、コーヒーを飲みながらあたしはCCのHPに記載されていた番号に電話をした。
『Hello, This is Contradiction.Co』
若い女性の声が聞こえてきて
「Please connect me to Jake, the CEO, on the phone.I am his old friend Kashiwagi...(CEOのジェイクにお取次ぎを。”旧友の瑠華 かしわ…”)」言いかけて、咳払いをし「Please mention Ruka Valentine and connect the phone.(”瑠華 ヴァレンタインから、と言って繋いでくださる?)」と聞くと
『Would you mind waiting for a minute?(少々お待ちを)』と、特段不審がられることなく、保留音になった。
ほどなくして
『Hey!It's been a long time, Ruka!(久しぶりだね瑠華!)』と五年前の記憶と変わらない明るく、しかしどこかセクシーな音程の声があたしの耳に響く。もっと警戒されるかと思いきや、思いのほかすんなり取り次いでもらったことに少し戸惑った。
『Five years......No, it's been six years.I was surprised by the sudden phone call.(五年……いや六年ぶりかな?突然の電話でびっくりしたよ)Moreover,Valentine......(しかもヴァレンタインって)』
ヴァレンタインの名前を出したら食いついてくる、と言うのは何となくわかっていた。
『I thought you were divorced.(君は確か離婚したんじゃないのか?)』
「Have quick ears(耳が早いわね)」
『It's a Wall Street rumor, it goes around so fast.Everyone knows.(ウォール街の噂だ、あっという間に出回る。知らないヤツはいないさ)』
「Are you implying that my marriage and divorce will rock the financial world?I'm honored.(あたしの結婚と離婚が金融界を揺るがす?光栄なことだわ)」
ふん、と皮肉って鼻で笑ってやると
『The stock market fluctuated wildly during your divorce.Oh, I'm sorry to hear about Fahrenheit.(君の離婚のとき株価が大きく変動したからね。ああ、Fahrenheitはご愁傷様)』
ジェイクはとってつけたようにさらりと言ってのけた。
ギリギリ…
あたしがローテーブルの上で爪を立てて手を握った。
―――何かが足りない、
当時はそう思っていたが、何かが”欠落”しているのだこのひとは。
付き合っている女より金のことが好き。変わらないわね。
なら、猶更あたしが今持ち掛ける話は悪いものではない。
利用させてもらうわ。
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目が覚めた。
セットしたアラームを切ると、ぴったり朝の7時。
NYでは18:30頃。
いい時間帯である。
顔を洗って歯を磨き、コーヒーを飲みながらあたしはCCのHPに記載されていた番号に電話をした。
『Hello, This is Contradiction.Co』
若い女性の声が聞こえてきて
「Please connect me to Jake, the CEO, on the phone.I am his old friend Kashiwagi...(CEOのジェイクにお取次ぎを。”旧友の瑠華 かしわ…”)」言いかけて、咳払いをし「Please mention Ruka Valentine and connect the phone.(”瑠華 ヴァレンタインから、と言って繋いでくださる?)」と聞くと
『Would you mind waiting for a minute?(少々お待ちを)』と、特段不審がられることなく、保留音になった。
ほどなくして
『Hey!It's been a long time, Ruka!(久しぶりだね瑠華!)』と五年前の記憶と変わらない明るく、しかしどこかセクシーな音程の声があたしの耳に響く。もっと警戒されるかと思いきや、思いのほかすんなり取り次いでもらったことに少し戸惑った。
『Five years......No, it's been six years.I was surprised by the sudden phone call.(五年……いや六年ぶりかな?突然の電話でびっくりしたよ)Moreover,Valentine......(しかもヴァレンタインって)』
ヴァレンタインの名前を出したら食いついてくる、と言うのは何となくわかっていた。
『I thought you were divorced.(君は確か離婚したんじゃないのか?)』
「Have quick ears(耳が早いわね)」
『It's a Wall Street rumor, it goes around so fast.Everyone knows.(ウォール街の噂だ、あっという間に出回る。知らないヤツはいないさ)』
「Are you implying that my marriage and divorce will rock the financial world?I'm honored.(あたしの結婚と離婚が金融界を揺るがす?光栄なことだわ)」
ふん、と皮肉って鼻で笑ってやると
『The stock market fluctuated wildly during your divorce.Oh, I'm sorry to hear about Fahrenheit.(君の離婚のとき株価が大きく変動したからね。ああ、Fahrenheitはご愁傷様)』
ジェイクはとってつけたようにさらりと言ってのけた。
ギリギリ…
あたしがローテーブルの上で爪を立てて手を握った。
―――何かが足りない、
当時はそう思っていたが、何かが”欠落”しているのだこのひとは。
付き合っている女より金のことが好き。変わらないわね。
なら、猶更あたしが今持ち掛ける話は悪いものではない。
利用させてもらうわ。