Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ふと時間を気にすると、夜も9時を過ぎていた。
神来社士社長とは、前回役員たちの集まりの日以来会ってもいないし、電話もなかった。
つまり半月以上何も沙汰がなかったが。
何かあったのだろうか。
ちょっと不安になって電話に出ると
『夜分遅くに申し訳ないです』と相変わらずキッチリと前置きして神来社支社長が切り出した。
「いえ、家に一人でしたから。何かありましたか?」
『その様子だとお父上から何も聞いていない?』と探るように聞かれ、俺は相手が見てないのを分かっていたが首を横に振り
「いいえ、何も」と答えた。
『そうでしたか……』と神来社支社長はふぅと大きくため息をつき
「あの、何か……」ありましたか?と問う前に
『神流グループの株の35%が外資系ファンドに買い取られました。今日の正午のことです』
俺は目を開いた。
「外資系―――ファンド……?」
『Contradiction.Coって聞いたことは?通称CC』
聞いた覚えはない。俺はまたも首を横に振ると
『向こう……アメリカでは大手の企業みたいですね。現CEOはかなりのやり手とか』
アメリカ―――……?
俺は携帯を耳に当てたまま、書斎に移動した。すぐさまPCを立ち上げ、Contradiction.Coについて検索した。
アメリカ、と言うのが嫌な引っ掛かりがある。一瞬、ヴァレンタインの傘下かと思ったが、英字で綴られたHPの内容をざっと見てもヴァレンタインとの繋がりはなさそうだった。
大体にしてマックスがうちの会社を買収―――とまでは現段階大げさだし、そもそも35%と言う数字が中途半端過ぎる。
ヤツが本気を出したなら、間違いなく67%以上の株を買い占め、一気に叩き込む筈だ。
『私なりにも色々調べましたが、向こうではあまり評判が良くないみたいですね。しかし現CEOはかなりのやり手だとか…手段は選ばないが、彼らによって統合…この場合M&Aをした企業はその多くが成功しています』
CEO…
俺はその情報を探るべく、『CEO』の場所をクリックした。