Fahrenheit -華氏- Ⅲ


村木さんは小さく吐息を付き、同時に煙を吐き出すと




「『失敗すればいいのです』とあなたは言いましたよね?この失敗にも意味があるのでは?」




無骨なのか無機質なのか、その声は淡々としていた


けれど


この人はこの人なりに、あたしを励ましているのだ、と気づく。


意味―――……


なんて考えたことない。


あたしは無意識のうちに自分の左腕…自分で切った場所をそっと押さえた。その場所がたった今切ったばかりのように急に疼きだす。


ふと気を緩めると、痛みがまるで追いかけてくるようにやってくるのだ。


心が傷つかない為―――…



『もっと大事にしろよ!自分のこと!』



昨日、啓が言った言葉を思い出す。


大事に―――


あたしは膝に置いた腕の中、顔を埋めた。


だったら、あたしがこうならないよう……近くに居てよ。近くで見ててよ。


嗚咽が漏れそうになる。


それを必死に隠しながら俯き、唇を噛みながら泣きたくなるのを何とか堪える。


分かっている。


自ら招いたことだから、啓を責めるのは間違っている。


分かっているのに、気持ちがついていかない。


そう簡単に気持ちを切り返るなんて―――



できないよ。



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