Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ぜっん!ぜんっ!!めでたくない!!
俺と、瑠華が余興―――!?
何てこった!
入社して五年一度もひいたことのない”アタリ(ある意味大ハズレ)”を引いちまうなんて。よりによって瑠華と二人!?
イマイチ余興と言うのを理解していないのであろう、瑠華が佐々木に
「余興とは?」とまたも聞いていて
「まぁその時々ですけど、大抵2人組で歌を披露したり」
「歌!?」瑠華が珍しく少し上ずった声をあげ、佐々木の肩がビクッと揺れた。
「…ダンスとか…?」とさらに声を低めて目を泳がせる佐々木。
「ダンス!?」瑠華がまたも目を開いて前のめりになった。
「あ…!あと漫才とか」
「………」
もはや何もリアクションできない、と言った感じで瑠華がふらりと体を傾ける。
佐々木、もうそれ以上は言うな…
見かねた佐々木が
「あのぅ、僕柏木さんと変わりましょうか」と言いだし、
ナイス佐々木!お前が変われっ
と願うも
「いえ、それはズルしたことになります。引いた私が最後までやりこなします」
責任感が強いのは知ってたヨ。いいことだよネ、うん。でもね、想像以上に大変なことなんだよ、瑠華ちゃん。
「でも…何やるんですか…」
佐々木は俺の方をちらりと窺い
「そうですね…」瑠華は顎に手を置き考え込む。
こうなったらヤケだ。瑠華とは別れたとは言え、まだまだ未練たっぷりだし、何なら取り戻す勢いの俺。これを利用しない手はない。
二村だって俺たちが一緒にくじを引いちまうことを予想できないだろうしな。
だったら楽しむのみ!!
「ダンスとかどう?ほら、柏木さんワルツすっげぇ上手いじゃん!」(マックスと踊っていたことを思い出し)と急に必死になった俺が慌てて言うと、俺のまさに豹変と言った態度を若干疑っているようだが、瑠華が目を細め
「それなら……私は何とかなりそうですが、部長は?」と今度は俺の方に前のめりになる瑠華。
「……う゛…」ダンスなんて踊ったことねぇし。
「でも柏木さんが漫才とかガラじゃないですし、僕が入社したばかりのころ村木次長がクジを引いてしまい、誰だったかな~…詳しく思い出せないですが、やっぱり二人で漫才していましたが、場はしーん…ってなってました」
ああ、あれな。
あれはあれで俺の中でウケた。
「では、ダンスにしましょう。多少下手でもそれなりに会場を工夫してパフォーマンスを加えれば」
瑠華は疑いのまなこからあっさりと考えを翻し、何事もなかったかのように前を向く。
「……う、うん」
多少下手でも、と言われたことにちょっとショックを受けるも、ここは瑠華に任せるしかない。
てかダンスって言やぁ、体もくっつくし、練習時間とかも濃密になりそうだ!
こうなったらヤケだ。これは神様がくれたチャンスだと思って思いっきり楽しんでやる!