Fahrenheit -華氏- Ⅲ


と、意気込んでたときだった。


TRRRRR…


俺のデスクの内線電話が鳴った。


ナンバーは『902』綾子からだった。


内心では『何だよ!俺ぁ今忙しいの!』と勢い込みたいところだが


「はい、外資物流、神流です」と機械的に出ると


『秘書課の木下です。会長が神流部長をお呼びです。至急、9階第一会議室にお越しください。柏木補佐も一緒に』と綾子は俺以上に機械的で、


え―――……


瑠華も?


「待って、柏木さんにも代わる…」と言いかけたが


『大至急、お願いします』と綾子はいつも以上に機械的に言って、何だか有無を言わさない強引な切り口で電話は一方的に切られた。


俺は思わず瑠華の方を見た。


俺の顔がよっぽど困惑に満ちていたのか、瑠華が不思議そうに顔を傾けている。


――――

――


「とにかく、良くわからないけど”大至急”だって。それも会議室だ。何か身に覚えがある?」エレベーターを待っている間、隣に並んだ瑠華に問いかけたが


「さあ、全く身に覚えがありませんが」と瑠華は相変わらずの無表情だった。


とは言ったものの……一つだけ身に覚えがある。


土曜日、神来社支社長から電話が掛かってきて、彼は月曜日の今日本社に呼び出しが掛かっている、そして俺も呼び出しを食らうだろうことを言っていた。


しかし俺だけならまだしも、何故瑠華も―――


やっぱり瑠華とジェイク・ダリスは繋がっていたって言うことか?


親父や役員たちはその真偽を確かめたいのかもしれない。


マズイ状況だな。


ちっ


俺は心の中で小さく舌打ち。


だが、瑠華の様子を見ると普段通り。何故自分が呼ばれるのか興味すらなさそうだ。


9階第一会議室に到着すると重い観音開きの前に綾子と瑞野さんが控えていた。


「お待ちしておりました」といつになく仰々しい綾子の表情はどこか固かった。


ごくり、と生唾を飲む。


綾子と瑞野さんが二人が掛かりで観音開きの扉を開け、開かれた扉の内側、親父や神来社支社長をはじめ、緑川副社長、瓜生常務と鴨志田監査役も居る。副社長や常務と監査役の表情はかなり固く、いっそ強張って見える。


そして親父の横に―――


俺は目を開いた。





ジェイク・ダリス―――?

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