Fahrenheit -華氏- Ⅲ
それからキッチリ五分後、綾子と合流して会社から歩いて7分程度のちょっと小洒落たカフェに落ち着くことになった俺たち。
「へぇ佐々木くんてこうゆうお店好きなの?」と綾子が物珍し気にキョロキョロ。
「いえ、好きって言うか……ここのオムライスが美味しいって噂で聞いてたんですけど、何か一人じゃ入りづらくて」
と佐々木が照れ臭そうに言う。
「分かる~、私も牛丼屋に一人で入れないもの~」
「嘘つけ!お前は牛丼大盛にビール飲んでただろ!何、今更女子ぶってンだよ」
「何よ!バラさなくてもいいじゃない」
キャンキャン
二人で口喧嘩をしていると、佐々木も気を許したのか小さく笑った。
佐々木が言うオムライスを三人分注文して
「でね~、さっき謎のアメリカ人が来てたわけよ~」とオムライスが運ばれてくるまで綾子はかいつまんだ話を佐々木に話聞かせている。
流石に投資うんぬんの話はしなかったが。
「あー残念、あと二十歳、歳がいってたらいいのにー」と綾子は口をとがらせる。
出たよ、このジジ専。
「あー…それで柏木さんは、さっき部長が言ってたその外国人と会食ってことなんですねー。はぁ、凄いややっぱり柏木さんは」
佐々木がうっとりとした目で手を組む。
「今頃すっごいご馳走食べてるんですよね~きっと、いいなー」
「うまいかどうか分からないぐらい緊張する場だ。行って得なことは何もねぇよ」と自分だって行ったことないのに、負け惜しみで言ってやる。
「そうよ~、要らない気を遣うだけだから疲れは十倍にもなるんだから」
運ばれてきたオムライスを口に運びながら
「あー、こっちのオムライスの方が100倍美味しいわ♪流石佐々木くんね」とご満悦。
「僕も初めてなんですけど、ホント美味しいですね~!」と佐々木もすっかり打ち解けた。
その後、佐々木がトイレに立った。
その隙を狙ってか、綾子が俺の方に顔を寄せ小声で囁いた。
「あのジェイク・ダリスって男、何か怪しいわ」
綾子の言葉に俺も無言で頷いた。
「色々調べてみたけど噂じゃ、相当悪質な商売をしてるみたいじゃない」
「まぁ強引なM&Aとか?」
「そうそ、素人のあたしですら怪しいと思うのに、会長は信頼してるみたいなのよね。今だって柏木さんと会食まで…」
綾子の言葉で一つ、確信に近づけた気がした。
親父も―――グル?
てことは信用してもいいのか?
綾子とひそひそと話し合ってると佐々木が戻ってきた。そこで俺と綾子の会話は途切れた。
「はー、久しぶりに外で気心知れた知人とのランチ♪最高ね」
結局、綾子とランチしても誰の目から見てもジェイク・ダリスは怪しい……以外の情報は得られず、オムライスだけを食って社に戻ったが、
瑠華はまだ帰ってなかった。
空席になった席を見つめ、不安だけが俺の脳内を不快に満たす。