Fahrenheit -華氏- Ⅲ
嘘だと言ってよジョー。
♠ K ♠
俺たちがランチから帰ってきても、瑠華はまだ帰ってきていなかった。
会食に出かけてもう二時間は経っている。
それから一時間近く、俺はイライラと仕事を進め……
……気になり過ぎて進まない…
アイツ…ジェイク・ダリスは何者だ?まるで俺の気持ちを見透かしているかのような言い方…
瑠華は訛りが強いって言ってたし、実際俺も会議中は聞き取れなかったが、最後の最後にまるで挑発してくるような物言いの時はハッキリと聞き取れた。
てことは訛りはフリなのか。
「あー!もぉっ!」わっかんねぇ!!
気分転換にタバコを吸いに行こうかと思った所だった。
「ただいま戻りました」と瑠華が帰ってきた。
GUCCIのジャッキー1961、迫力を備えた漆黒レザーのバッグを椅子に置くと、ほんのわずかラメが煌めくジャケットを脱ぎ、ハンガーラックに掛けた。
その姿はちょっと外出から戻ってきました、と言う感じ以上のものは感じられない。
「おかえりなさい、会食だったみたいですね。お疲れ様です。でも、いいな~美味しかったですかぁ?」と佐々木がのんびり聞いていて
「いえ、私は通訳で同行しただけですので通訳をするのに必死で食事など楽しめませんでした」と瑠華がバッグを彼女の後ろのパーテーションに立てかける。
20万以上のバッグをそんなに雑に扱っていいんかよ……って、突っ込むとこそこじゃない!
TRRRR…
「はい、外資物流の佐々木です」
とちょうど佐々木の電話に内線が掛かってきた。
ナイース!!
「柏木さん、ちょっといい?」俺はタバコを吸うジェスチャー。
瑠華は不思議そうに顔を傾けたものの
「ええ、ちょうど疲れていたので」と言い、大人しくバッグからこれまた同じGUCCIのGGシガレットケースを取り出す。
――――
――
「で?お話と言うのは?」
喫煙ルームはやはり俺らしかいない。いつも思うのだがタイミングが良いのか悪いのか。
いや、今は断然良い。
二人でいるところを二村に見られでもしたら…と言う心配はあるものの、言い訳なんていくらでも作れる。
俺はタバコの先に火を点しながら「あのさ……ジェイク・ダリスとは知り合い?」と直球に聞いた。