Fahrenheit -華氏- Ⅲ

すでにタバコに火を点していた瑠華はゆっくりと顔を上げ、これまたゆっくりと煙を吐き出した。


「―――いいえ、初めてお会いしましたが」


―――信じて……いいのだろうか……


「い…イケメンだったね……」


「はぁ……まぁ…タイプではありませんが」瑠華は気のない様子。


タイプじゃない!ほっ…


としてる場合じゃない!


「いや、随分親しそうに見えたからもしかしたら知り合いかな~とか思ったり」


俺は扉を開けて出ていく二人の様子を思い出しながらさりげな~く、聞いてみた。


「親しそうに?」瑠華がハッキリと顔を歪めるのが分かった。


「部長、全てのアメリカ人と私が知人であるとお思いのようですが、アメリカはどれだけ人口が多いと思っているのですか。東京の何百倍だと?」


「あ…あはは~、そうネ」


俺は何とか苦笑い。


「ごめんね……気を悪くした…?」


「いいえ。ただ、ハゲタカファンドのCEOと知り合いか、と聞かれて腹が立ちましたが」とさらりと無表情で言われ


気を悪くはしてないけど…腹が立ったって、もっと悪いじゃん!


「ごめんなさい!」俺は手を合わせて謝った。


もういいや、色々と。


瑠華のこと信じよう。


たとえ瑠華が俺に嘘をついていたとしても、それは俺にとって不利になることはない。それだけは信じられる。


「……ごめんね、親父の気まぐれに付き合わされて」


「いいえ、でも私は通訳には向いてないと思います。もう来年一年間のお喋りをした気分です」


てことは来年一年は無言!?


やめてよ!!


俺の来年の目標は瑠華とやり直して、もっと仲良くなっていっぱい笑っていっぱい喋り合いたいって言うのにっ!


親父め!!!!

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