Fahrenheit -華氏- Ⅲ

20XX年12月9日


あれから四日経った。今日は週末の金曜日。


四日間、二村からの接触もなく俺と瑠華の周辺にこれと言った変化はなく平穏と言っていいのか分からないが、日々が過ぎていった。


ただ一つだけを覗いては。


「マルーナホテルの披露宴会場はこんな風になってます」佐々木が瑠華にマルーナホテルのHPを見せていて


「かなり広い会場ですね」


俺も瑠華の隣に並び佐々木のモニターを覗き込む。


ちょっと変わった趣向の披露宴会場で、教会も兼ね備えているように見える。


広いホールに上質なカーペット、豪華なシャンデリア。通常、新郎新婦が座るであろうひな壇はちょっとしたショーを行えるデザイン性の高いステージだ。その向こう側は東京の街が見下ろせる全面ガラス張りの窓。


ステージは幅約3メートルの通路が十字に交差していて、外堀みたいな溝があった。


「この溝……何でここだけあるんですか?」瑠華が佐々木に聞き


「水を張るみたいですよ。ほら、夜だとライトアップしてきれいですよね」


水なんて前張ってあったか……?俺が首を捻っていると


佐々木が画面を切り替えた。「あ、でもオプションみたいですね」


「なるほど、幾らか出せばいつもと違ったステージに変化する、と言うわけですか。


これ、利用できませんかね」


「まぁ、交渉次第では何とかなりそうだけど…水が張ってるのにこの通路でダンスって難しくね?」俺がうーんと唸ると


「今から練習しても追いつくかどうか分からない状況です、多少インパクトがあればそちらに目を奪われるので目くらましになります」


目くらまし……


最初から俺のダンスは期待してないってか…


トホホ


< 648 / 800 >

この作品をシェア

pagetop