Fahrenheit -華氏- Ⅲ

四日間練習したにも関わらずこれと言って俺のダンスに進展はない。


「珍しいですね…部長って運動神経良いのに」と佐々木が同情気味に言って俺を振り返る。


「ふつーに生きてりゃダンスなんて無縁だ。踊れなくて当然だろが」


ムっとなって腕を組むと


「じゃぁ柏木さんは”普通”じゃないんですか…」と今度は瑠華の方を見る。そう言えば佐々木は瑠華の経歴をこれと言って知ってるわけじゃないしな。勿論、瑠華がバツイチ子持ちだということも知らない。


子供は取り上げられたが…


「向こうでちょっとかじった程度です。何せパーティーが多かったもので」と瑠華は何事もなかったかのようにさらりとかわした。


「パーティーですかぁ、益々僕と生きてる世界が違うなぁ」佐々木が小さく吐息。


「一緒じゃありませんか、少なくとも今は」瑠華は佐々木の言葉をあまり気にしていない様子で、佐々木の背後からマウスをカチカチと操作し


「柏木しゃん……」とじーんとしている佐々木を無視して


「あら、ここ有名なアーティストもミュージックビデオとかで使用しているみたいですね。動画が上げてあります」


と勝手に動画を再生。


マイペース過ぎるぜ。


「て言ってもなぁ、ただでさえダンスなんてしたことねぇし、あの特殊な会場で動きが取りづらいし」


と弱音を吐いている俺をよそに、瑠華は動画をどんどん視聴している。


俺でもグループ名ぐらいは知ってる今流行りのアイドルや、K-POPアイドルたちから始まって


「あ、紫藤 響も出てるんですね」


「シトウ ヒビキ?」


『誰それ』と言う意味合いで思わず佐々木と顔を合わせると


「ヴァイオリニストですよ、弟さんはチェリストで従兄妹の方はヴィオリストでたまにトリオでも出ているのですが、このミュージックビデオはソロですね」


ヴァイオリンにミュージックビデオってどんなん、ってちょっと思ったが、再生された動画を見て俺たちはまたも顔を合わせた。

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