Fahrenheit -華氏- Ⅲ

ヴァイオリニストって言うからタキシードか何か着てるのかと思いきや、白いワイシャツと黒いパンツと言うシンプルな格好。靴は履いていなくて裸足。


しかし、驚くところはそこじゃない。


そのヴァイオリニストはヴァイオリンを弾きながら、バレエのようなしなやかな踊りをこなしている。


「…なんじゃこりゃ…」
「すっごい…」


俺と佐々木の声がまたもかぶさった。


指がもつれるんじゃないかと思われる程指板の上に指が走り、その動作とリンクするかのように足が動いている。


少しはだけたワイシャツの裾までがキッチリと計算されたかのようにきれいに舞う。


「すっげぇな……サーカス見てるみたい」


思わず呟くと


「なるほど」瑠華が口元に手を当て頷いた。


「「?」」俺と佐々木が瑠華を見て


「これ、使えるかもしれません」


「「え?」」またも俺と佐々木の声が重なった。


「当日は、この十字路以外に水を張ってもらいます。そうするとスペースは十分に確保されます」


「ま、まぁ理屈は分かるけどね、でも靴履いては流石に…」


「裸足で踊ります。私がハロウィンパーティーで着ていたドレスを着れば、ターンやステップの際に水が跳ね上がります」


「おお!それは何かキレイだな!」俺はぽんと手を打った。


それだけでもインパクトは跳ね上がる。


「ただ、気を付けなければいけないのはこの溝の段差ですね」


「幅にして30㎝ってところですね」佐々木がう゛~んと唸り腕を組む。


「十字路をうまく把握できれば問題ありません」


ま、まぁそう簡単には言うけど??


何か俺の一言でさらにレベルが上がった気がする…


大丈夫だろうか、俺…


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