Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「サンドイッチでしょ?おにぎりでしょ?ポテチとポッキーと、それから…」
佐々木はサンドイッチやおにぎり等を取り出しながら
「ジャーン」と言って缶ビールを取り出した。
「おまっ…仮にもまだ仕事中だぞ」と一応注意はしてみるものの、瑠華が同行していてそれを止めなかったのなら、それは瑠華も容認してるってことだよな、と思い直した。
「NYにいるとき、会社を立ち上げたばかりの頃、よくこうやってコーラやビールを飲みながらピザやハンバーガーを食べながら議論したものです。懐かしいな…と思いまして」
ま、まぁ?瑠華は一本二本のビールで酔うことはないから大丈夫だと思うが。
「他の社員の方々には秘密で」
しー、と唇に手をやる瑠華。
瑠華がどこか楽しそうに見えて、口元に淡いほほ笑みを浮かべているのを見て、これもこれでアリだな。と俺も笑いながらビールの缶に手を伸ばした。
「そう言えば、セントラル紡績さんに納期が遅れるということ伝えてくださいましたか?」
ビールのプルタブを開けながら瑠華に聞かれ
「うん、菅井さんにはちゃんと伝えた。しょうがないって。いい人だよな、菅井さん」
そう言えば菅井さんともしばらく会ってない。
真咲の具合はどうなんだろうか。
まぁこないだビジネスの話をしたときは何も言ってなかったから、大丈夫なんだろうけど。
佐々木は今日の仕事を終えたのか、
「柏木さん、何かお手伝いしましょうか」としきりに瑠華に話しかけていて
「ありがとうございます、ではこの年度の資料を集めてくださいますか?」と瑠華は鬱陶がることもなく…
何気に二人って良いコンビだよな。ちょっと嫉妬!
してる最中、
TRRRRR…
今度は瑠華のGUCCIのバッグの中から着信を報せる音が聞こえた。
「すみません…音を切り忘れてしまって…」
「いいよ、就業時間外だし」
瑠華はぺこりと一礼してスマホを取り出し、画面を見つめると、そのまま
「すみません、ちょっと席を外します」と言って席を外した。