Fahrenheit -華氏- Ⅲ

―――

――


「後ろ盾ぇ?ないない、アイツに限って」


葵さんはへらへら笑って手を横に振る。


「大体後ろ盾があるんなら、こそこそ回りくどいことはしないっしょ。一気に叩き込む筈だよ」


まぁ確かに…


「それよりさ、ジェイクなんとかってのとホントに何にも関係ないの瑠華ちゃん」


葵さんがちょっと疑うように目を上げ


「ノーコメントです」とあたしはビールのジョッキに口を付けた。


「何だよぉ、俺だけにはホントのこと言ってくれたっていいジャン。空汰には話さないからさ」


とは言ってもどこまで本当なのか。


あたしは口をつぐんだ。


「あー、黙秘権ってヤツ?」葵さんは何がおかしいのかへらへら笑って、それでもそれ以上突っ込む気はないのか


「今日店が臨休しててさ~、水漏れだって。フロアがひでーことになってンの。とてもじゃないけど開店できる状態じゃないんだよね~」と聞いてもないのに自身の近況をぺらぺら喋ってくる。


「そうですか」とあたしは適当に相槌を打った。


「これで一日の儲けが飛んだわけですよ~」と今度はさめざめと泣き真似。


なるほど


「私を呼び出したのは援助をしてほしいってことですか?」


目を細めて聞くと


「違うって」と葵さんは唇を尖らせた。


「俺、瑠華ちゃんのヒモじゃないもん」


「似たようなものだと思いますが?」


「ひっでぇ!」葵さんは大げさに眉を吊り上げたが、すぐに笑顔になった。


「ま、いいや。俺は瑠華ちゃんとこうして飲めれば、サ。ヒモでも何でも」


「何ですかそれ」今度はあたしがちょっと笑ってビールを飲み干す。


「毎回思うけどいい飲みっぷりだよね♪そうゆうとこも好き♪」


あそっ

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