Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「二村さんは焦っていると聞きましたが、今のところ私に何もアクションを起こしてこないのが不気味なんですが」


と切り出すと


「だから俺に色々探れって言ってきてンの。俺、瑠華ちゃんに心を許してもらってる~みたいに言ってて、それをアイツ信じてるみたいだからさ~」


「なかなかの役者ですね」


思わず皮肉ってしまったが


「でしょ~♪」と葵さんはどこか楽しそう。


「それよりさー、空汰、副社長の娘と子供の話、結局うやむやになってるけど、ホントにできたの?」


あたしは目を上げた。お代わりのビールのジョッキをぐっと握り


「さぁ」と肯定も否定もしなかった。


「そんなにのんびりしてていいの?確かに先手を打ってあるって言ったのは瑠華ちゃんだけどさ。


あいつ、SNSでめっちゃ自慢してるよ?彼女が妊娠したーって」


ふぅん、SNSで、ねぇ。


「好都合です」口の端に笑みを浮かべてビールを半分程飲む。


「で、反応は?」とあたしが聞くと


「うーん、まぁ?”おめでとう”とか?そうゆうありきたりなの。あ、ミミちゃんもイイネしてたよ」




え―――……?




瑞野さんが―――





「それ、見れますか」思わず勢い込むと


「うん、ほら」と葵さんはすぐにスマホを見せてくれた。


その画面には赤ちゃんのエコー写真とともに二村さん自身のコメントが載っていて


”彼女が妊娠しました。近々結婚する予定です”と一文。


問題のイイネの場所をタップしていくと


@miz_miyuと言うアカウントが確かにハートマークの所謂”イイネ”をしていた。





これだ―――



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