Fahrenheit -華氏- Ⅲ
それでも諦めの悪いあたしは瑞野さんの投稿を遡ってみた。
猫が好きなのか、野良猫みたいな猫たちの撮影が多く見られた。
そのうちの一枚に、あたしは目をまばたいた。それは何の変哲もない街の植え込みを覗くような形の白と黒のブチ猫の後ろ姿が写っていた。
「これ…明らかに男性の物と思われるスニーカーの先が入っているのですが」
「ん?」葵さんもスマホを覗き込む。
「ホントだ……」とちょっと考え込んで、すぐに手をポンと打った。
「これ、空汰のスニーカーだ」
「本当ですか?」思わず目を開いて葵さんを見つめると
「間違いないよ、だって限定物ゲットできたって自慢してたからさ、あ、SNSでね。ちょっと待って…」
葵さんはSNSの画面を二村さんのSNSに変えて(二村さんは鍵を付けていないようで誰でも閲覧できるようになっている)
「ほら、やっぱそうだ!これ空汰だよ!」
確かに、二村さんのSNSにさっき瑞野さんの猫の画像の端にちらりと写っていたものと酷似している。
「瑞野さんの先ほどの投稿はいつのものですか?」
「ちょっと待ってて~、空汰がこのスニーカーを買ったのが今年4月5日、ミミちゃんの猫の投稿が10月30日になってる」
10月30日―――確かにその日は休みで、会長の仕事が無かったら瑞野さんも休みだろう。矛盾点は感じられない。
「つまり、瑞野さんは二村さんと二人で出かける仲だと言うことですか」
「うーん…二人かどうかは…まぁ確率的には高いと思うけど、これ突き付けたところで他の誰かも一緒だったって言われるんじゃ?」
葵さんは頭の後ろに手をやって首を捻った。
「突き付けるつもりはありません、ただの確認です」きっぱり言うと
「そっか」と葵さんはどこをどう納得したのかうんうん頷く。
やはり二村さんは、いや瑞野さんが―――?
好き、なのだろうか。