Fahrenheit -華氏- Ⅲ
キャバクラなんて初めて入った。
「「「いらっしゃいませ~」」」
キャバクラだから女性が出迎えてくれるのかと思ったが、扉を開けてまず視界に入ったのが所謂ボーイと言うのか黒いベストとパンツスーツの彼らが
「二名様ですか?」と聞いてきた。
「うん、二人~♪女の子の分は無料だよね」と葵さんはあたしの方を見て
「はい。当店では男性客のお連れ様の女性からは料金を取りませんのでご安心を」
そういうものなの??
ここは……葵さんに任せるのが得策だろう。
何せ現役キャバクラボーイだから。
「”みほ”ちゃんている?ツレから聞いたんだけど、可愛くて気が利くって」
「みほですね、かしこまりました。ではお席にご案内いたします」
ボーイは恭しく頭を下げ、あたしたちをボックス席へと案内してくれた。
ビルの1フロアがまるまる店になっているようで店内は広い。少しトーンダウンした照明に、飾り物のシャンデリアが下がっている。大きなモニター画面が三面の壁に掛かっていて、その画面にはカラオケだろうミュージックビデオとテロップが流れていた。客の一人がマイクを握り熱唱している。その隣で大きく胸の開いた赤いドレスを着た女性が手を叩いていた。
「いらっしゃいませ、当店は初めてでいらっしゃいますか?」
とおしぼりをこれまた恭しく渡され
「うん、はじめて~ツレから聞いたんだ~いい店だって」
「それはありがとうございます。当店は45分のセット制でして、只今の時間は1セット7,500円になっております」
45分で7,500円は高い気がしたが、これが相場なのだろう葵さんは「ふんふん、飲み物は?」と聞いている。
「ビール、焼酎、ウィスキーはセット料金に入っていますのでどれを飲んでいただいてもお代はかかりません。それ以外は一杯2,000円いただいております」
「じゃ俺焼酎、水割り。瑠華ちゃんは?」とふいに聞かれ
「あ……じゃぁウィスキーをロックで…」と何とか頷いた。
いきなりの展開過ぎて、初めて来る場所で緊張してたのもある。
みっともない。