Fahrenheit -華氏- Ⅲ
あたしがお店で頼んだボトルが運ばれてきた。
ウ゛ーヴクリコ、ローズラベルだ。
「あ……あの…このシャンパン20万するんですけど…ホントに大丈夫?」とアミさんが探るように…或いは話を逸らすように?聞いてきて「生憎ですがキャッシュでそこまで持ち合わせておりませんので、本日はカードを切らせていただきます」とお財布からクレジットカードを取り出すと
「うっそ!アメックスのブラックカード!?初めて見た!!」
二人があたしのクレジットカードを覗き込み、
「すっげぇ…」と葵さんも感心。
葵さん…あなたはこちら側なので、そんな反応見せないでください。
「話を戻します。何せ時間もないので、その名刺には何て書いてありましたか?」
「何て書いてあったっけ……」とアミさんが不安そうに目を揺らし、ミカさんがハっとなったようにピクリと肩を揺らし
「そうだ!あたしそのいただいた名刺まだ持ってる!」と短いスカートの上に置かれたシルバーのクラッチバッグからピンク色をした名刺入れを取り出す。
「あった、これだ」と言って、あたしに手渡してくれた。
あたしはそれを受け取り目にすると、その目がだんだんと開かれていった。
神流グループ
常務取締役
瓜生 孝雄
瓜生―――常務?
「何故、瓜生常務が二村さんと……」思わず独り言が漏れると
「あ、やっぱりお知り合いだったんだ~、お姉さんも役員の一人?見るからに高そうなお洋服とか靴とか」
「いいえ、私は役員ではありません。役職は付いていますが、元々家が資産家なので」
と適当な嘘をついた。
「へー、資産家で役職って、役員さんのお嬢さんか何か?」とユカさんに聞かれ、
「……いいえ?コネは特にありません」あたしは首を横に振った。
「何故、そうお思いに?」
「えー……だってぇ、そのおじさん、”空ちゃん”のお父さんだって言ってたからぁ。おねーさんもてっきりそうなのかと」
え――――……
”空ちゃん”のお父さん―――
瓜生常務が――――