Fahrenheit -華氏- Ⅲ
君はきれいだ。
♠ K ♠
二村が―――
常務の息子―――?
「嘘だろ……
嘘だと言ってよジョー」
思わず口に出すと、まだ電話が繋がっている村木から
『神流部長……古すぎるネタはいいです』
それ、裕二にも言われたワ。
『とにかく、証拠もあるので、明日ぐらい確かめてくれますか』
「え…ええ、分かりました。じゃぁ明日窺います」
『それではまた、あまり席を外し過ぎると怪しまれる』
「そ、そうですね」と言い終わらないうちに通話はプツっと切れた。
俺は慌ててプライベート用の携帯を取り出し、緑川に電話をした。今なら、二村は常務と村木と一緒に居るはずだから安全だろう。
緑川は知ってたのか―――
TRRRR…『はい、もしもし~』相変わらず間延びした声を聞いて、こいつは今二村が何を考えてるのか一ミリも知らねーんだろうな、って思った。
「あ、緑川さん?夜遅くにごめんね、今って二村近くに居ないよね」居ないことを知りつつも、確認した。
『いませんよー、何か今日会社の人と飲みに行くとか言ってたから』心なしか緑川の声は弾んでいるように思えた。
「そっか……緑川さんさ、二村の親父のこと知ってる?」
『二村くんのお父さん―――?さぁ、お父さんがいないことは知ってますけど、それ以上は聞いてません。だって聞けないし……』
まぁそうだよな。
緑川が嘘をついているようには思えなかった。
と言うことは緑川も二村の親父が瓜生常務だと言うことを知らなかったというわけか。
『なんかー、二村くんお父さんは最初から居なかったみたいで、お母さんが女手一つで育ててくれたって……裕福じゃなかったけど、それはそれで楽しかったみたいですよ』
緑川の言葉に俺は頷いた。
と言うことは、人一倍ハングリー精神も高いと言うわけだ。この話からすると瓜生常務も利用されてるかもしれない。
「ありがと、ちょっと知りたかったから」早々に電話を切ろうとすると
『待ってください、部長は二村くんのお父さんのこと何か知ってるんですか?」
う゛
鋭いな。
「知らないから聞いてンの。最近、あいつの家庭が母子家庭だって知ったから」嘘八百だったが、緑川は信じたようで
『あたしも二村くんの家庭のことそれ以上は、よく知らないんですよ~』
お前……よくそんな得体の知れない男と結婚する気になったな……