Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「まぁ今の俺の電話は気にすんな。二村にも俺の電話のこと黙っておいてくれ」
『なんかよく分かりませんが、分かりました』
分からないのか分かったのかどっちだよ。
と、まぁ緑川に当たった所でしょーがない。
と言うわけで早々に緑川と電話を切ると
TRRRR…
またも俺の携帯が着信を報せ
何なの、今日は!電話の台風かっ!と突っ込みつつ画面を確認すると
着信:菅井さん
となっていて、俺は目を開いた。
一瞬、真咲に何かあったのかと思った。
「はい、神流です」と緊張気味に出ると
『菅井です、夜遅くにすみません。神流さん今日これから空いてませんか?例のバーで一杯付き合ってくれませんか…』
菅井さんの声は緊急性は感じられなかったが、若干疲れがにじみ出ていた。
「どうしたんですか…何かあったんですか…」とおずおずと聞くと
『いやぁ…お恥ずかしい限りですが……満羽と喧嘩をしてしまいまして……夕飯も作ってくれなくて…』
あー、そう言う…
何だか菅井さんたちの喧嘩話って平和~だよな。
「じゃぁ何も食ってないんですね。良かったら今から俺んち行きません?」
『え―――……?』
―――――
――
「いやぁ、申し訳ない」と菅井さんはソファに腰掛けることなくひたすらにぺこぺこ。
「気にしないでください、俺も暇してたんで」
まな板の上で白菜を切りながら笑うと、菅井さんはほっと安堵の笑みを浮かべた。
「きれいなお部屋ですね」
「いえいえ、最近忙しくてあんまり掃除もできてなくて」
「いい部屋ですよ。鍋ですか?いいですね、この時季あったまって。何かお手伝いします」と菅井さんは着ていたジャケットを脱いだ。
「いえいえ、座っててください。すぐできますので」
俺は昆布とカツオベースと生姜入りのだし汁に切った白菜を入れた。すでに切り分けたニンジンや大根、えのきなんかも入っていてあとはタラと、イカとホタテのつくねを入れるだけの状態。
つくねをスプーンで掬い入れながら
「ところで、喧嘩の原因は何ですか?あなた方が珍しいですね」
と言うのも、菅井さんが真咲に口答えする姿が想像できないからだ。
「実は……生まれてくる子の性別が分かって」
「へぇ。男の子?女の子?」興味本位で聞いてみた。
「女の子です」
俺は思わず苦笑い。真咲は顔だけならいいが性格に難ありだからな~
菅井さんに似てほしい。
「実は名前で揉めてまして…僕は”あゆみ”が良いって言ってるんですけど、満羽は”なみえ”が良いって…」
「あー、あいつ安室奈美恵好きでしたからね~……」言いかけて
ん??
「もしかして菅井さん浜崎あゆみ好き?」目を細めると、菅井さんは目をまばたき
「分かりましたか」
分かる分からないって問題以前。くっだんねー!!