Fahrenheit -華氏- Ⅲ

いや、くだらなくないか。


子供の名前は一生の問題だからな。双方が納得して可愛い名前になるといいのだが……


てか顔が真咲に似て性格が菅井さんに似たら、結構な美人になるに違いない。


ちょっと羨ましいぜ……


俺と瑠華の子だったら………


やっぱ顔は瑠華に似て欲しいよな~、性格は俺の方がいいかな~


と、妄想が暴走していると


「……な、さん。神流さん」


菅井さんに呼び止められ


「へ?」


「鍋、もういい具合じゃないですかね」


「あ、そうですね!」


あっぶね~!自分の妄想にとり憑かれるところだったよ!


鍋も出来上がり、俺たちはテーブルで鍋を挟んで缶ビールで乾杯。


「満羽のやつ、完全に拗ねて実家に帰っちゃったんですよ…」


菅井さんは缶ビールを口にしながらがくり。


「ありゃりゃ、それは大変ですね。あそこの親父さんは怒らすと面倒だから気を付けてくださいね」


かく言う俺も真咲との子供が出来たことを謝りに行くと殴られそうになった。幸い警察沙汰にはならなかったが。


まぁ理由が理由でもあるが。


真咲のあの性格は父親譲りでもあるんだろうなー…





父親譲り―――




そっか、


二村は父親譲りの性格ってワケか。あの温和な顔と口調で腹の中真っ黒の瓜生常務と血が繋がってると思うと納得だ。


「菅井さんは―――


父親になるって知ったときどう思いました?」


俺の質問に白菜とタラを取り分けていた菅井さんが目をぱちぱち。


「……嬉しかった…ですけど…」


「そうですよね、だから真咲と結婚したわけですしね。


でも世の中嬉しくない父親もいるんでしょうね」


俺はあの温和な瓜生常務の顔を思い浮かべた。虫一匹殺せなさそうな顔をして、外に女を作り挙句孕ませていたなんて。


とんだタヌキだな。緑川副社長がタヌキ一号だったら常務は二号だ。


「……事情はよく分かりませんが、何かあったんですか…?まさか神流さん…」


あわあわと菅井さんが細かく手を動かし口元を覆う。


「いや!誤解です!俺はそんな下手うちませんよ、一回失敗してるんで(←注:超小声)


その……知り合いにそういう人間がいるってわけで」


「知り合い?」菅井さんは首を捻る。


「詳しくは言えませんが、お互いもういい大人だし今更認知がどうのこうのって問題でもない気がするんですけどね、


ただ、今まで認められていなかった子供に、突然父親だと名乗る人物が出てきたら―――」


実際のところはどうか分からないが。


瓜生常務が名乗り出たのか、二村が調べ上げたのか―――


ビールを飲んでいた俺の手がふと止まった。


調べ上げた―――?


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