Fahrenheit -華氏- Ⅲ
二人が親子だと言う確証は今のところない。
二村が常務に近づいて『息子です』って言ったら?
いや、それでもDNA鑑定したら一発アウトだ。
二村がそんな簡単な嘘をつくとは思えない。
と言うことは、その線は限りなく低いな。
やっぱあの二人は親子、か。
でも確認はしたい。
俺は携帯を取り出すと紫利さんにメールを打った。
”瓜生常務と二村はそっちに行った?
あいつらは親子関係にあるらしい。それらしいこと探ってくれないか?”
「何か…良く分かりませんが、きっと事情があったんでしょうね…ところで神流さん、大丈夫ですか?お疲れのようですが」と菅井さんが心配そうに眉を寄せた。
「いえ……大丈夫です」菅井さんに心配されるとは……俺はどんな表情を浮かべていたのだろう。「事情……ねぇ。大方どこぞのホステスに手を付けて孕ませた体でしょう」
はぁ~と大きくため息をつく。
瓜生常務と二村の顔の造形はどこをどう見ても似ていない。と言うことは二村は母親譲りの顔だろう。そこから逆算すると母親は相当な美人だったに違いない。女好きの瓜生常務が放っておかない程。
「逃げた、と言うわけですか。うわぁ、最低ですね」菅井さんが顔をしかめる。
「まぁそこのところハッキリしませんが。想像では」
ぐい、とビールを飲んだが、思いのほか苦い味が喉を通っていって俺は眉をひそめた。
自分を認めず、放棄していった父親に、再会してすんなり受け入れられるものだろうか。
二村は―――もしかして瓜生常務をも陥れるつもりなのだろうか。
もしかしてこれは二村の壮大な復讐計画なんじゃないか。
そんなことすら思えてくる。
「まぁ今考えたってしょうがないことですし、せっかくなので男二人の鍋パーティー楽しみましょう」
俺は気持ちを切り替えて菅井さんに笑いかけた。
菅井さんもつられたように笑った。
と言うわけで文字通り男二人の鍋パーティーは意外に盛り上がり、いい感じに酔っぱらったところでお開きとなった。
その夜、紫利さんから返信は
なかった。