Fahrenheit -華氏- Ⅲ


俺は拳をぐっと握った。


チャンスだ。


二村はあのオークションの本当の意味をまだ知らない。切り札だと思っている。


だが二村


切り札を出した所で、お前は






終わる





『まったく……厄介な女を連れてきたものだよ、会長も。ビジネスに女は必要ない』


俺は思わず目の前で腕を組んで録音に耳を傾けている村木をちろりと見た。


「私はこうもはっきり言ってない」と言いたげだったが、あんた…似たようなこと瑠華に吐いてたよな。


『可愛げのない小娘だったな。愛想もないし、お前はああゆうタイプを選ぶんじゃないよ。なまじ頭が良い女は扱いにくい』


瓜生常務の言葉に、ピキピキ!(怒)俺の額に青筋が浮かんだ。


可愛げのない女ぁ!?瑠華は世界一可愛いに決まってンじゃないかよ!!(確かに愛想はないかもしれないけど)


『分かってますよ、俺は守備良く緑川副社長の娘と仲良くしてるんでご安心ください。あれは扱いやすくて楽だ』


『おお、それは良かった』


良かない!!


瑠華と緑川が聞いたら、お前ら即死だぞ!と言う内容だ。


胸糞が悪くなってきたところで


『お待たせいたしました』と村木の声も聞こえてくる。


「これで会話は終了です」





村木は録音を停止させた。


「これはこの会話のコピーです。盗聴めいた”これ”は恐らく使い物にならないかもしれませんが、念のために」


村木は律儀にUSBに会話の録音をコピーしてくれていた。さすが陰険、やることえげつねー。


まぁ助かったちゃ助かったが。


俺が村木の家を出るときだった。


ずっと待ち望んでいた紫利さんからメールが来た。




”遅くなってごめんなさい、今から会える?”


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