Fahrenheit -華氏- Ⅲ
あの、俺が見たピンクの髪の若い男と―――?
もしかしてマックスと?
もしかして、もしかして佐々木と??いや、それはないな。(←失礼)
もんもんと考えていると、相変わらずのシンプルなブラックスーツに包まれた香坂さんが足早にやってきた。
「お待たせいたしました!」
「いえ、我々が早く着きすぎただけですので」
一通りの挨拶が終わって、さぁ打ち合わせに行こうか、と思っていたら香坂さんは瑠華の周りをうろうろ。無遠慮な視線で全身を眺め回し、
流石の瑠華も
「あの…?」
と不審そうに眉を寄せた。
「思った通りだわ!柏木さんきっとサイズピッタリ!」香坂さんの顔が華やいでパチパチと手を打った。
俺たちは目をぱちぱち。思わず顔を合わせた。
「いえ、ねぇ……実は今日大事なクリスマスウェディングのイベント日なんですよ、だけど女性のモデルの子がインフルエンザに掛かっちゃって……急遽モデルを探してたんです」
聞けば、このクリスマスウェディングのイベント内容は、挙式をクリスマス前後に行う予定のカップル限定の模擬ウェディングを開催されるようだ。
「「…………」」
香坂さんの言わんとすることは分かる。分かるが……
「いえ、うちの柏木は……」俺が言いかけたとき
「かしこまりました。お受けいたします」と瑠華が頭を下げた。
「へ!?柏木さっ……!」思わず瑠華の腕を引っ張ったが
「ですが、お受けする代わりにこちらからも条件があります」
「条件?」香坂さんが首をかしげたが、すぐに顔色を悪くして「まさかローズウッドの件…」と口元に手をやる。契約が切られる、とでも思ったのだろうか。
「いえ、ローズウッドの契約に関しましては引き続き、こちらでお任せいただければ。わたくしどもの条件としましては御社が提携しているマルーナホテルの会場の視察と使用権原をいただきたく」
「マルーナホテル??」香坂さんが目をまばたく。
瑠華はある程度の条件を飲む、とは言ったがこれは流石に……と俺は思っていると
「いいですよ」
こちらが思った以上に香坂さんはあっさり。
え!?いいの!?
「お式のない日しかお貸しできませんが」
「それで結構です」
「では、こちらの条件にも頷いていただけるんですか?」香坂さんはちょっと目を上げ瑠華を様子見る。
「ええ、構いません」
なんっ……!
何でこうなるーーー!!