Fahrenheit -華氏- Ⅲ


――――

――


30分後。


「お待たせいたしました~♪やっぱりサイズぴったり」


ほくほく顔の香坂さんが手を叩いて、控室から出てきた。


「凄く素敵な新婦さんですよ」とこそっと俺に耳打ち。相変わらずのゴシップ好きは変わんねぇな。俺は苦笑い。


そりゃ瑠華は何を着ても似合うだろうが……


シャッとカーテンを開けられ、試着室から出てきた瑠華を見て俺は目を見開いた。


ハートラインの大きく開かれた胸元から腰に掛けてレースや花の刺繍がしてある、腰から下の部分はきれいなマーメイドラインが描かれていた。裾の部分はこれまた新婦の華やかさを描く丸い円形に飾られていた。確かに、このラインを着こなせるモデルはなかなかいないだろう。


白い剥き出しの肩が眩しいほどだ。


瑠華は相変わらずの無表情だったが





「きれいだ………」





思わず本音が出てしまった。慌てて口に手をやったものの


「でしょう?やっぱり柏木さんは華があるっていうか」と何故か香坂さんの方が得意げだ。


瑠華のくっきりとした鎖骨のラインから細い肩や、予想よりボリュームのある胸元は、こざっぱりとしていてよりドレスのきらびやかさが強調されてる、と思いきや


「あらやだ、私ったらネックレスするの忘れて……」


ネックレス……確かにそれがあれば一層華やぐと思うが。


「これなんてどうかしら」と香坂さんはジュエリーボックスのようなものから適当なものを見つけたのだろうか、パールとダイヤの入ったゴージャスなネックレスを取り出した。


それを持って瑠華の後ろ側に回ると、ネックレスを瑠華の首に回した。


その時だった。


「香坂さん!デモンストレーションのお式の神父さんの到着が遅れてまして」


と別のスタッフが顔色を変えて飛び込んできた。


「まぁ、大変、ちょっと私は席を外します。そうだ、神流さん、このネックレス柏木さんに付けてあげてください」


え!?俺が―――!?

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