Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「ネックレスぐらい自分で着けられます。貸してください」


有無を言わさずネックレスを奪い取られると、瑠華は首の後ろに回しネックレスを装着しようとしたようだ。


だが、思ったより難しかったのか、途中何度も顔をしかめていたから、今度は俺がそれを奪い


「貸して、時間も押してるみたいだから」と言い瑠華の後ろに回った。


ふわふわにアップにした髪の下、白くて細い首がまぶしい程だ。そこにネックレスをゆっくりと回すと俺はことさらゆっくり留め金を止めるフリ。


瑠華の髪から彼女が愛用しているシャンプーの香りがふわりと香ってきた。


ヤバイ……心臓の音、聞こえそう…


時間が押してるって言ったの自分なのに……


それでも少しでもいいから瑠華のすぐ後ろできれいな彼女を見下ろしていたかった。


このまま―――


華奢な瑠華を後ろから抱きすくめられたら―――


と言う衝動にも駆られる。


けれど思い留まった。と言うかされた。


「ネックレス着けられましたか?」と香坂さんが入ってきたからだ。


「ああ、はい。今…」俺は慌てて留め具を留め、瑠華は何でもない様子で香坂さんに連れられ行ってしまった。


「神流さんも宜しければお式のデモンストレーション見ていかれませんか?」と香坂さんにほぼ強引に勧められ


「ご自身のときの参考になるかもしれませんよ」と…


一言余分だっつうの!


そんな予定すぐねぇっつの!


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