Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「ちょっと!勝手になになさるんですか!」慌ててスマホを取り戻すと、思った通りSNSの画面になっていて、しかも投稿された後だった。


葵さんは悪びれた様子もなく


「ミミちゃんだってたぶんまだ空汰が好きだと仮定したら、この投稿は共感できる筈だよ。運が良ければ何らかのアクションがあるかも」としれっと言い頭の後ろで手を組む。


そんな簡単にいくもの?


すぐに投稿を削除しようとしたが、


「まぁまぁ一晩だけ待ってみようよ~、何もなかったらでも遅くないんなじゃない?そもそも瑠華ちゃんのアカウント鍵付きなんだし、誰も変に勘繰らないよ」


ま、まぁ……そうかもしれないけれど。


「分かりました。一晩だけ待ってみます。何もなければ削除しますよ。こんな意味深な投稿……」


意味深とは言え、まぁ事実と言えば事実だけれど。


結局、葵さんの提案には乗ることにしたけれど、今日はこれ以上葵さんといる体力がない。早く帰ってお風呂に長めに浸かって、スコッチを飲みながら佐々木さんから借りたDVDを見て気晴らしをしよう。


葵さんに宿り木になってください、とは言ったものの今は葵さんと居るより一人になりたい。


「ご協力ありがとうございました。それでは私はこれで」


「えー?これからどっかご飯でも行かない?」と、当然のように誘われたが


「今日は体調がすぐれないので」と断ると、葵さんの手がにゅっと伸びてきてあたしの額にその温かい掌が当てられた。真冬の寒い気温の下だったからか、その手がやけに熱く感じられた。


びっくりして目をまばたいていると





「熱はないようだね」




と、にかっと愛想の良い笑顔を浮かべて葵さんがにこにこ。葵さんはそれ以上何かをすることはなく、その手はすぐに離れていった。

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