Fahrenheit -華氏- Ⅲ
始業時間まであと15分と言った所で、
「あ、ところで柏木さんSNSとかやってます?」と、佐々木が唐突に言い出した。
佐々木め、瑠華がSNSをやってたらそれで繋がろうと言う魂胆だな。生憎だが瑠華がそんな面倒なことする筈がない。
思った通り瑠華は書類をトントンまとめながら「SNS?やっていませんが」とさらり。
やっぱりな。思った通りだ。そう簡単に瑠華と繋がれると思うなよ?ふふん、としたり顔でいると
「そうですかぁ」と佐々木は少し残念そう。
ふふん、とどこか勝ち誇った笑みを浮かべていると
TRRRRR
瑠華の内線に電話が掛かってきた。
「はい、外資物流の柏木です。―――はい、……はい、それは申し訳ございません。今からお伺いします」
瑠華は電話を切ると「経理部から書類の不備で呼び出しでした。今から行ってきます」と淡々と答えた。
「経理部からぁ?つってもまだ就業時間前だぜ?後から行くって言っとけば良かったじゃん」と俺は思い切り顔をしかめた。経理部め。俺ら世代の社員はこちらに甘いが部長クラスの連中は何かと俺らを目の敵にしてやがる。
「私の方も急いでいる案件ですので、少しでも早く指摘くださって良かったです。今から行ってきます」
相変わらず真面目だな。てか前向き。
瑠華は必要な書類を手にさっさと部署を後にした。
後に残った俺と佐々木。
佐々木はちょっとため息をつきながらスマホを眺め
「どうしたんだよ、何かトラブルか?」と何の気なしに聞いてみた。
「それが……僕のSNSにフォローしてくれたひとがいるんですけど、たぶん女性??だと思うんですけど」
と佐々木はその画面を見せてくれた。
その画面にフォローされた、と言うアカウント情報が載っていて……俺は思わず目を開いた。
”優里”
ユーリ??