Fahrenheit -華氏- Ⅲ

優里っちゃ『ドライフラワー』だよな。あの歌、瑠華と別れてから聞きまくったぜ。


胸に刺さりまくって毎回泣きそうになった。


って、そうじゃなーーーーーい!


俺は思わず佐々木のスマホを奪うように手にした。


イルカのスノードーム……?のようなもので。


これ……


俺がこないだ瑠華の家に訪ねて行ったときリビングのチェストに飾られていたスノードーム……と酷似していた。


あのときはそれがどういった経緯で手に入れたのか聞かなかったが(聞けなかったが)アカウントのアイコンの下に一文字
『You are 24 years old. You will be a wonderful woman!
(24歳のあなた。きっと素敵な女性になっているでしょう)』と書かれていた。


瑠華の―――SNS?


「鍵付きのアカウントなんですけど、昨日の投稿」と言って佐々木は俺の手の中にあるスマホを操り、まさに昨日の夜撮られたであろう記事を開いた。それは会社付近の街路樹に飾られた青と白、二色のイルミネーション。


『彼氏と別れて初めてのクリスマス、寂しい』と一言あり、青白いイルミネーションの街頭の写真が載せられていた。


「これって会社の近くですよね。同じ会社の女性が僕のことひっそり思ってくれてるのかなーとか思ったんですが、深読みし過ぎですよね……」


「ああ……深読みし過ぎじゃね?単なる偶然ってヤツだろ。大体東京じゃなくてもこんな光景どこでもあるだろ」と返したが


間違いない、このアカウントは瑠華のだ。と何故か確信した。


でも瑠華は何故鍵付きのアカウントでSNSを?”あの”面倒くさがりな瑠華が……


何かワケがあってSNSを始めたに違いないが、そのワケってのがまるで分からない。


「ちょっと貸せ」俺はスマホを佐々木から奪うと


「ちょっとぉ!プライベートの侵害ですよ」と佐々木はちょっと怒ったが


「お前に気がある女なら俺が確認してやる。単なる遊びだったら痛い目に合う前にブロックできるだろ?」ともっともらしい理由をつけて言うと


「なるほど、女性に百戦錬磨の部長がそう言うのなら頼りがいがあります」と顔の前でガッツポーズ。


百戦錬磨ぁ??んなわけはないし、人をタラシみたいに言うもんじゃありません。


だがあれこれ言うと佐々木に疑われる。俺は”優里”の投稿を遡って見た。


< 708 / 828 >

この作品をシェア

pagetop