Fahrenheit -華氏- Ⅲ
投稿自体は9日から始まっている。今から遡ること四日前だ。たったの四日間と言う短い期間もあってか、投稿記事は少なかった。その中で猫の画像をちらほらと見つけた。
その中に『猫を飼いたいけれどマンションがペット禁止だから飼えない』、と言うコメントも発見した。
瑠華のマンションはペット禁止と言うわけではなさそうだが。俺たちがまだ仲良かった頃、瑠華のマンションに出入りしているとこれまたたっかそーな犬や猫を抱いた住人と出くわしたからな。
でも、瑠華も何でそんな嘘までついて投稿した?
それとも俺の思い違いで、この”優里”と名乗る女(?)は瑠華じゃないのだろうか。
そんなことを考えていると瑠華が経理部から戻ってきた。俺は慌てて佐々木のスマホを佐々木に渡し、
「あ、おかえり~」といつもの調子でへらっと笑った。
瑠華は一瞬疑い深い視線で目を細め俺を一瞥すると、それだけで背中をゾゾゾと嫌な何かが撫でていく。
べ、別に……悪いことしてませんよー、と必死に装ったが通じたかな??
とドキドキしながらPCに向かい合うと、瑠華の興味はすぐにそれたのか経理部からの書類をデスクに置き、それ以上何を言うわけでもなく椅子に腰かけた。
とりあえずはほっ。
その日の午前中の仕事はあまり身が入らなかった。
瑠華が席を外した時を狙って
「なぁ、さっきのSNSって誰でも見られるの?」と佐々木に聞くと、佐々木はすっかり忘れていたのか俺が未だに気にしていることにちょっと不審顔だった。
「誰でもってわけじゃ…鍵付きでしたし。その人にフォロー申請して、承諾されれば見られますよ」
「じゃぁお前は申請したってワケ?お前もコソコソと、やるな。柏木さんと言う本命がいながら」とちょっと意地悪く笑ってやると
「い、いいじゃないですか!ネットで繋がるぐらい!大体先にフォローしてきたの向こうですよ」とちょっと怒った。
「じゃぁさー、この女がお前に本気で、告られたらお前付き合ったりするの?」
「そ、それは……」と佐々木は口ごもったがすぐに「大体顔も知らないし会ったこともないんですよ。情報も少なすぎるし、すぐに付き合うとかは考えられませんよ」と口を尖らせる。
まぁ、もっとものことだ。
せめてもっと瑠華と分かる私物が映りこんでいたりしたら分かるのに。