Fahrenheit -華氏- Ⅲ

俺と緑川は一緒にカフェを出ることになった。緑川は時間だと言っていたが俺は会社に戻って一服したい。緑川は前より接しやすくなったがそれでもやっぱり疲れる。あの独特のテンションについていくのが疲れるんだよなー


「部長、話し聞いてくれてありがとうございます~」と緑川はご機嫌だったが。てか別に話聞くために一緒のカフェに入ったわけじゃないし。偶然だ、偶然。


「おうよ」と8Fフロアで喫煙ルームに向かおうと二手に別れたが、喫煙ルームは生憎だが人たいっぱいで俺が入るスペースもない。


仕方ない諦めるか。と思ったが食後の一服がどうしてもしたかった。


思いついたのは以前綾子と喋った非常口のベランダだ。確かあそこもお粗末ながら灰皿が置いてあった筈。


綾子から瓜生常務と鴨志田監査役の会食の件を聞かされた場所だから縁起の良い場所ではないが、人気が少なくて割とゆっくりできる。てか皆その場所に灰皿があるなんて気づいてないんだろうな。


重い鉄の扉を開けようとすると、外から男女の声が聞こえてきた。


珍しい、先客か?と目を細め扉を閉めようとしたが、思いとどまった。その声は二村と瑞野さんの声だったからだ。


「そんなの勝手過ぎるよ!あたしだって自分のしたいようにする!」と珍しく声を荒げた瑞野さんの声が聞こえてきて俺は目を開いた。


「待てよ、みゆき!」と二村の方も焦っているように思えた。


何だ?痴話喧嘩か?


「大体空ちゃんは勝手過ぎるんだよ!とにかくあたしのことにもう口出ししてこいないで!」


「何を怒ってるんだよ、みゆき最近ちょっとおかしいぞ」と二村はいつもの飄々とした態度が微塵も感じられない程焦燥の声がにじみ出ている。


「おかしい?おかしくもなるよ!あたしは空ちゃんのこ――――」言いかけたとき、ちょっと開いた扉から俺とばっちり目があっちまった。

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